【マディソンブルーディレクター中山まりこ】「おしゃれ迷子はチャンス」の真意とは?
ファッション業界でも一目置かれる存在、「マディソンブルー」ディレクターの中山まりこさん。メンズライクなアイテムを女性らしく、軽やかに着こなすそのスタイルは、長年のスタイリストとしての経験とロジックに裏打ちされた“ゆるがない”もののように思えますが……。 「実はいま、おしゃれ迷子なんです」。中山さんのおしゃれ迷走期との向き合い方とはどんなものなのでしょうか?
自分のスタイルに迷うとき、それは人生に迷っているときかもしれない。避けられない体や環境の変化、心のゆらぎ。人気ブランド「マディソンブルー」ディレクターの中山まりこさんに、自身のおしゃれ迷子期について尋ねた。お会いするたびに、少しずつおしゃれの気分とステージが変わっている中山さんは、もがき続けることもまた、おしゃれの楽しさ、おしゃれを愛することなんだと教えてくれる。
「素敵なおばあちゃん」をめざして
長年にわたってスタイリストとして重ねたキャリアを生かし、自身のブランド「マディソンブルー」を立ち上げたのが2014年のこと。中山まりこさんが、ジャケットやシャツ、デニムといったベーシックなアイテムを通して提案するスタイルは、年齢の垣根を超えておしゃれを楽しみたい女性たちを惹きつけてやまない。そこには、洋服を知り尽くしたプロの視点だけでなく、おしゃれとともに泣き笑いしながら歩んできたひとりの女性としての経験や知恵が脈づいている。だから、着る人の心にまっすぐ届く。何より筋金入りの洋服好き。中山さんにお話を伺ううち、あるキーワードが浮かび上がってきた。それが「おばあちゃん」だ。「素敵なおばあちゃんになりたい」という思いが芽生えたのは、なんと幼いときだったという。もっとも、こんな光景が脳裏に鮮やかによみがえってきたのは30代になってから。
「祖母が、すごくおしゃれな人だったんですね。白髪に紫のメッシュを入れて、レオナールのワンピースを着たりして。おばあちゃんのピンクって素敵だなあ、と思いました。寝転がって昔話を聞かせてもらっているときには、シワシワの手にごろんと大きな宝石の指輪が光っているのが目に入って。ああ、この手だから宝石が似合うんだろうな、ピチピチとした私の手には似合わないなあ、なんて幼いながらおばあちゃんに憧れたことを思い出したんです」
今思えば、視線は常に年上で格好いい女性を追いかけてきた。スタイルも生き方も。インディアンジュエリーに夢中になった20代の頃、白髪を三つ編みにしたネイティブアメリカンの老女のビジュアルに心をわしづかみにされた。ガサガサでシワが深く刻まれた肌に、ダンガリーシャツをまといインディアンジュエリーを身につけた姿が、たまらなく格好よく映った。「私、シルクが似合うおばあちゃんより、カサッとしたメンズライクなものが似合うおばあちゃんになりたいんです。それが永遠のテーマ」
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