2014年、わずか6型のシャツからブランドが始まった「MADISONBLUE(マディソンブルー)」。以来、”ハイカジュアル”を提案し続け、今やエクセプショナルなブランドに。

そのマディソンブルーのデザイナー兼ディレクターである中山まりこさんをファッションエディターの松井陽子さんが訪問し、その服の魅力に迫ります。第3回目は、中山まりこさんのシャツ作りについて迫ります。

 

マディソンブルーの基軸となるのがシャツ。そのシャツに迫ることは、マディソンブルーを知ることであり、デザイナーでありディレクターでもあるまりこさんのおしゃれへのアティテュードに触れること、そう思います。

 


この日まりこさんが着ていたのも、洗い晒しのオックスフォードシャツ『CHELSEA』でした。正真正銘のトラッドアイテムですが、長めにとったカフスのバランスや少し華奢なフォルムでひと味もふた味も異なる佇まいに。ウエストの”B”と、その横にはピョンと飛び跳ねたウサギ! 以前に行ったポップアップショップでの特別アイテムで、親交のあるアーティストShinsuke Kawaharaさんとのコラボレーションなのだそう。思わずクスッとなるワンポイントも何ともお茶目で印象的。オーセンティックなシャツを、どこか余裕のあるこなれた大人の一枚へと昇華させています。

 
トラッドなシャツで、まりこさんらしいモノトーンコーデを。エルメスのレザーブレスレットとブラックひすい×ゴールドのリングが圧倒的な存在感を放っています。黒のネイルもモード感たっぷり!でも決してモードが過ぎないのは、プレッピースタイルの代表でもあるオックスフォード素材のシャツの存在感あってこそ。大き過ぎず、コンパクトすぎないサイズ感はインしてもアウトにしても絵になります。


変えるのは生地と色。
フレームとなるデザインは変えない


まりこさんの提案は毎シーズンはっとさせられるほどフレッシュ。なのに、軸は全く変わっていません。新作も加わりますが、そのほとんどがこれまでのデザインに生地や色を変えることで目新しくなったもの。

「私がトレンドものを作っても仕方がない」とストレートに語るまりこさん。もちろん新しいデザインも出すけれど、基本は定番のアップデート版。同じ形でも、それは全く違うムードを宿したものになります。エッセンシャルなものに吹き込まれたまりこさんの”今”は、リアルでライブ感に溢れています。だからとっても新鮮なのに、変わらずにエターナル。それもまたずっと長く寄り添い続けてくれる理由です。

「ムードってあるの。何をきっかけに、どこからそうなったのかが不思議なほど、みんなが引っ張られるように同じものを探していて、同じものに目が留まる。一年前は動かなかったのに、翌年の春に『ハンプトン』が飛ぶように売れたり。かと思ったら、ある年は『マダムシャツ』ばかりがバーっと出たり」。

お客様だけでなく、それはショップのスタッフも同じなのだとか。

「今はこっち、って気分がある。洋服を通して、人の気を感じられるの。それは、やっぱり同じものを何年も続けているから。毎年違うデザインを作っていたら、わからないと思う。デザインのベースを変えずに提案し続けているから、人や世の中のムードが直に感じられる。今年はみんなこういう気分なんだ、じゃ、来年は何年か前に作ったあのボトムスの色を変えてやってみようかな、とかね。そういう人のエネルギーを感じて、私もエネルギーをたくさんもらっているんだと思う。そしてそれをまた服にして返す。本当におもしろい!」。

そう話してくれたまりこさんに、私もエネルギーをもらった気がします。つくづく、同感! 実際に私も、その一人だから。この夏はマダムシャツばかりを選んでいたり、ある年の冬はしばらく着ていなかったフレアパンツが大活躍したり、と。それができるのは、その洋服が決して過去のものになってしまわないから。でも、これがまた不思議で、展示会で新しいラインナップを見るといつもワクワク、ドキドキ。新しいものはやっぱりエネルギッシュなんです。

 

この日の私が着ていたのは『マダムシャツ』。
「大人の女性に似合うシャツってなかなかなかったから、これもまた『私が作るしかない!』と。イメージはイタリアマダムのシャツスタイル。深めのデコルテにアクセサリーをジャラッとつけたあの着こなし」とまりこさん。

バストのちょうどいい位置に4つ目のボタンをまず設定し、そこから上下にボタン位置を決めたそう。『ハンプトン』に対してこちらはデコルテが開きすぎないように、襟の設定にもひと工夫。

「最初はネーミングも悩んだの。ブランド名の『マディソン』もシャツの『ハンプトン』も、インスパイアされた土地のイメージから名付けたから。でも、考えるほどこれはやっぱり『マダムシャツ』しかない! って」と話してくれました。

シャープな胸の開きと、無駄のないコンパクトなフォルムが上半身をすっきりと引き立たせてくれる。袖を通すだけで、エレガントなマダム気分になれるから本当に不思議。確かにその名の通りの一枚なのです。 

 

右)中山まりこ●「マディソンブルー」デザイナー&ディレクター。2014年にブランドをスタート。トラッド、ワーク、モード、エレガンスなどのエッセンスを絶妙にブレンドしたハイエンドなカジュアルスタイルの提案に、おしゃれに一家言ある大人の女性たちから絶大なる信頼を集める。
Instagram: @marikonakayama @madisonblue_official
左)松井陽子(まついようこ)●ファッションエディター&ライター。湘南在住。雑誌やカタログ、広告など広いジャンルで活躍中。mi-molletで月に2回アップされる「スタッフの今日のコーデ」も人気。
Instagram: @yoko_matsui_0628


シャツから見えるマディソンブルー、そして、まりこさんのものづくりへのアティテュード、いかがでしたか。次回は、そのアティテュードの源について伺います。どうぞお楽しみに!

<次回に続く>
 

撮影/目黒智子
構成・文/松井陽子
編集/朏 亜希子(mi-mollet編集部)
撮影協力/マディソンブルー
 


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