vol03. スローンを訪れて
「スタッフの今日のコーデ」の私服姿にファンの多いエディター・松井陽子さん。記事の中でも松井さんのスタイリングにもよく登場する、「もはや体の一部のよう」という最愛のファッションアイテムの魅力をお届けする連載企画です。今回訪れたのは、ニットとカットソーのブランド、SLOANE(スローン)。ものづくりの背景やこだわりの数々などについて、ディレクターの小峰明彦さんにお話を伺いました。
シンプルだけど、美しく寄り添ってくれる。
主役を引き立てるための名脇役ニット
珍しい色や、少し尖ったデザインの新しいボトムスを着るとき。あれこれ合わせてみて、結局一番しっくりくるのは、スローンのニットやTシャツです。かと思えば、長年愛用しているリーバイスの501も品よく引き立ててもくれる–––。ファッションアイテムとしての「ベーシック」ということだけでなく、「礎」という意味で、コーディネートの「ベース」にもなってくれる。言うならば、パーツをより引き立ててくれる唯一無二のファンデーションのような存在ではないでしょうか。だからオールシーズン、結局ワードローブに欠かせない。私にとってスローンのアイテムはそんな存在です。
今回、ディレクターの小峰さんにスローンのアイテムのそれぞれの特徴や、ニットブランドとしての気概を伺っているうちに、ふんわりとしていた私の中の“好き“の気持ちにしっかりと輪郭が見えてきたような気がしました。そんなスローンのアイテムの魅力を2回にわたりお届けします。
言うならば「ファンデーション」
おしゃれのベースが整えば、印象も垢抜ける!
「ファンデーション」と先ほども書いてみましたが、普段私はほとんどメイクをしないので、ファンデーションのことは正直あまりよくわかっていません。ただ、不慣れゆえ、実はファンデーションをまとった素肌の仕上がり具合にはちょっと敏感です。撮影などでたまにメイクしてもらう時もそう。ファンデーションがしっくりくると、素顔のままよりも格段に洗練されて、上に重ねていくメイクが映えてパッと垢抜けた印象になる。それは、とてもよくわかります。ところが、自分でもやってみようとしても、テクスチャーやトーンがどうも合わないのか、なんとなく心地が悪く、自分ではない気がして落ち着かない……。
周囲を見渡しても、おしゃれが素敵に映える人は素肌感までこなれている気がします。その人のままなのに、素肌の美しさや骨格の美しさが引き立っていて。ファンデーションは、おしゃれの印象さえも変えてくれるんだな、と。
スローンのアイテムは、私にとってはメイクで言うところの理想的な名ファンデーション。洗練されたベースとなり、他のアイテムを引き立てつつ、メイクアップしてくれるから。これがあるとないとでは、コーディネートの完成度が全然違うのです。
ゆるっとニットを着こなすヨーロッパの
マダムがアイディアリソースに
佇まいはシンプルなはずなのに、なぜだか全身を印象的に見せてくれる―― そんなスローンの逸品を生み出しているのは、ディレクターの小峰明彦さん。アパレル会社でデザイナーとしてのキャリアを積み、2016年の秋冬シーズンからニットブランドとしてスローンをスタート。「なぜニットブランドを?」と思っていましたが、小峰さんご自身がニットが大好きという、とてもシンプルな答えが返ってきました。
「若い頃はインポートブランドに携わっていたので、ヨーロッパ出張が多かったんです。パリやミラノを訪れる時に、つい素敵にニットを着ている女性にも目がいくんですよね。比較的年齢層が高めの方が、ゆるっとしたシルエットのニットを着ているのを目にした時に、それがなんだかとてもセクシーで絵になっていて。当時日本では、ニットといえばメンズもレディースもぴたっとしたものばかり。着こなしの雰囲気が全然違うなって、あまりにも印象的でした。ベーシックなニットこそ、サイズのバリエーションがあってレディースもメンズ関係なくサイズで選べるようになればいいのかな、と思ったんです」。
確かにひと昔前は、シンプルなニットは”普通”のサイズで着るもの、そんな印象だったような気がします。なんというか、選択肢すら考えない、まるで制服のように。
あまり意識していませんでしたが、いつからかニットもコーディネートに合わせてサイズを選ぶようになりました。シンプルなパンツには、体が泳ぐゆるりとしたサイズ感で空気も一緒に着るように。ドラマティックなボリューム感のロングスカートなら、ジャストサイズのニットで上半身をコンパクトに。ボトムス次第で合わせたいニットのサイズ感は異なりますし、同じボトムスでもニットのサイズ感が異なると印象はドラスティックに変わります。選べるということは、おしゃれがより広がり、着こなしもより自分らしくなっているということです。
実際私のワードローブにあるスローンのニットも、サイズは1から4まで、アイテムによってバラバラです。編集部でもよくスローンのニットはバッティングしますが、着る人によっても、着こなしのテイストによってもサイズ感は人それぞれ。それもとてもスローンらしい! そして、それは小峰さんのイメージが見事に実現され、浸透し、広がっているということ。素敵なことですよね、改めて。
次回は、この夏用に私が購入したニットと、スローンのニットのバリエーションについてお届けしたいと思います。どうぞお楽しみに!
左)松井陽子(まついようこ)●ファッションエディター&ライター。湘南在住。雑誌やカタログ、広告など広いジャンルで活躍中。mi-molletで月に2回アップされる「スタッフの今日のコーデ」も人気。Instagram: @yoko_matsui_0628
右)小峰明彦(こみねあきひこ)●『スローン』ディレクター。大手アパレル会社で紳士服の企画デザインを経て、無類のニット好きが高じて2016年に日本初のニットの専門ブランドとして『スローン』を立ち上げる。オリジナルのニットにとどまらず、こだわりを詰め込んだカットソーも大人気。
【写真】こだわりが詰まったSLOANE(スローン)の名品の数々
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構成・文/松井陽子
編集/朏 亜希子(mi-mollet編集部)
撮影協力/SLOANE
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