リスクとは「事故の発生確率」×「被害の大きさ」


堀:ひとつはリスクの膨大さですよね。リスクの大きさって「事故の発生確率」と「事故発生時の被害の大きさ」の掛け算で計算します。原発はそもそもが原子爆弾の平和利用から始まっているものだから、事故発生時の被害ははかり知れません。それでもやるのか、という話ですよね。「事故なんてそうそう起こるものじゃないし」という方向に動いていますが、そこはきちんと議論していかないといけないと思います。

アツミ:地震国の日本で福島の事故と人々の辛苦を見ていたら、私には「事故なんて」とはちょっと言えないです。もうひとつは?

堀:もうひとつは、世界中のどの国も解決していない、使用済み核燃料について。いわゆる「核のゴミ」問題です。日本では青森県六ケ所村の「再処理工場」は着工から20年以上たってもまだ完成せず、国内の核燃料サイクルは行き詰っています。青森県むつ市をはじめとする施設は「最終処施設」でなく、とりあえず置いておく「中間貯蔵施設」。最終的にどうするかは全然解決していません。
 

放射線量が天然ウラン鉱石レベルに下がるまで10万年

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アツミ:フィンランドの最終処分場「オンカロ」を描いた映画『100,000年後の安全』を見たんですが、巨大な地下施設にどんどん運び込み「後世の人が解決するだろう」って言ってて。すごく驚きました。 

 


堀:要するに、核のゴミの放射線量が天然ウラン鉱石レベルに下がるまでに10万年かかる。結局は、半永久的に保存しつづけるしかないんですね。ですから私個人としては、原発の新規開発と、基準を変えてまでの延命には反対です。現在ある原発は本来の寿命で廃炉にして、徐々に脱原発に移行すべきだと考えています。過渡期は、節電しつつ火力発電でつなぎ、同時に次世代の再エネ技術への投資を増やして国内電力を賄えるようにする。再エネの日本の技術が先行すれば、ビジネスとしてアジア市場を取りに行けます。このままだとヨーロッパ勢に再エネ関連の先行者利益をがっつり持っていかれてしまいます。

アツミ:日本は海外で原発を作るビジネスの資本提携や技術提携はしていますね。

堀:私は安全保障の観点から、原発の技術は海外におまかせではなく、国内でも持っておくべきだと思っているんです。核の技術を持っていることで、他国からの攻撃に対して、一定の抑止力になるという意味も含めて、今の世界情勢で完全に手放すのは怖いな、と。廃炉の技術も必要だと思います。この技術を確立するほうが、今後の世界においてアドバンテージとなるかもしれません。しかし、原発や国際政治の話はいろいろな立場や意見があるし、私も専門家ではなく、まだまだ不勉強なので、将来のことまではなかなか名言しづらいですね。一市民として自分なりに考えて意見を持つ、できればオープンに議論するのは大事だと思ってます。

アツミ:岸田首相は、この冬の電力供給不足を懸念して 、9基の原発を再稼働させると言っていますよね。

堀:でもあれは新しい規制基準に適合し、地元の同意も得てすでに再稼働している原発だし、すべて西日本にあるものなんです。だから実は東日本の電力ひっ迫とはあまり関係ないんですね。

アツミ:そうなんですか。政治的アピールなのかしら。

バタ:とはいえ、原発に“なんとなく頼り続ける”のはやはり怖い気がします。

堀:でも一方では、最近、研究開発が進んでいる次世代の小型原子炉については、私は関心を持って見ているんですよね。小型原子炉は小型なので冷却がしやすく、原子炉ごとプールに沈めるなどの構造をとることで、メルトダウンを防ぐことができるらしいです。私もまだまだ不勉強なのですが……。

バタ:ええと、つまり……?