南米からの移民の子としてN.Y.のブロンクスで育った彼女は、何をやっても白人女性のようには扱われずに有色人種女性として差別を受け、常に劣等感を抱いていました。

離婚した母親に女手ひとつで育てられた3人姉妹の末っ子だったジェニファーは、幼い頃から「男に頼らずに生きろ」と叩き込まれます。だけど姉妹の中では姉たちに敵うものは何ひとつなく、ダンサーから努力してスターになったあとも、マスコミで取り上げられるのはパフ・ダディやベン・アフレックらの有名人との恋愛ゴシップばかりで、歌もダンスも演技も、全く自信がないまま。当時、持て囃されていたセレブは皆、典型的な細身の白人女性。グラマーなボディのジェニファーは、あらゆるメディアから自分のボリュームのあるヒップをネタにされて辛かった、とも。

Courtesy of Netflix

私たちが想像する、自信に満ち溢れたJ.Lo像とは全く異なる彼女の真実。このドキュメンタリーは、アメリカ社会で成功するために戦い続けてきた、ひとりのラテン系アメリカ人女性の記録なのです。

 

彼女ほど成功した女性なら、その地位に安住してしまいそうなものなのに。「私にとって成功とは、常に進化して挑戦し続けるということ」と語るジェニファーに、団塊ジュニア世代の私は、もしかしたらこれって有色人種というだけでなく、世代による生きづらさもあるのかもと思いました。

なぜなら私も、レベルこそ違えど、常に「今の自分で満足してはいけない。戦い続けなければ負け犬」というような価値観に追い立てられるようにして生きてきたから。

この世代の母親って様々な機会や自由が与えられず、女性の権利や自立と戦ってきた世代。だから、母親からの「せっかくその機会が与えられているんだから、がむしゃらに働いて仕事で成功しろ」というプレッシャーと、「だけど私のように家庭もちゃんと持ってこそ一人前の女だし、孫の顔は人並みに見たい」という期待の、相反するメッセージを植え付けられながら育った人も多い気がします。言うなれば、母親が果たせなかった理想の女性像の呪縛にかけられている状態でしょうか。

そんな自分の息苦しさも重ねて観てしまった『ハーフタイム』。J.Loがあんなにストイックにがんばれるのは、彼女がほかの女性たちのために「世界を少しでも良くしたい」という気持ちを持っているからなのだということにもジンときました。だから彼女はかっこよくて、私たちをインスパイアする存在なのだなと。

Courtesy of Netflix

きっと世界は、ジェニファーが納得するほどにはまだまだ有色人種の女性に寛大ではなくて。でもこんな風に声を上げることで、分断された社会をひとつにしていくことが可能になっていくのかもしれません。

 


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