©︎ 2021 Deuxième Ligne Films - Petit Film All rights reserved.

里親家族の実話をもとにした感動作が生まれました。タイトルは『1640日の家族』。フランス映画です。キャッチフレーズの「大切なのは、愛しすぎないこと」という意味が繊細に伝わってくる描き方に心を奪われ、演技初挑戦にして天才ぶりを発揮した子役の演技に母性本能を刺激されること間違いなし。理屈抜きに思いっきり泣いて“涙活”したい人にオススメの作品でもあります。

 

小細工は一切なし。あらゆる感情の渦が観る人を飲み込んでいく


フランス映画の『1640日の家族』は確かに泣ける作品です。でも、あざとく泣かせようとする意図は感じません。里親家族にとって、里子のシモンと一緒に過ごした「1640日」がどれだけかけがいのない時間だったのか。原題でもある「La vraie famille=本当の家族」として互いにどれだけ向き合ったのか。真面目過ぎるほど真剣に追求した作品だからこそ、自然と涙を誘う力があるのです。

ストーリー展開からして変に凝った小細工は一切ありません。里親のアンナと夫のドリス、そして長男のアドリと次男のジュールの4人家族の“末っ子”として、6歳のシモンが当たり前にいる描写から始まります。転機はすぐに訪れ、シモンは実父のエディのもとへと帰っていくのか、里親家族の行く末をラストまで丁寧に描きます。

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むしろ、次に何が起こるのかっていう興味以上に、ド直球に投げてくる心情を観客も受け止めながら見進めていく。そんな作品です。大人から子供まで登場人物一人ひとりの嘘がなく、不器用なほど真っ直ぐな気持ちが次から次へと押し寄せてきます。愛情だったり、不安だったり、シモンの運命を取り巻く感情の渦に早々に飲み込まれていくはず。それは演技の秀逸さゆえにできる技なのかもしれません。

驚くのはシモンを演じたガブリエル・パヴィにとって本作が演技初挑戦だったということ。パリの公園で母親と遊んでいたところ、監督とキャスティング・ディレクターに声をかけられて発掘されたというエピソードからして、天才子役ぶりを物語っています。映画館のスクリーンに映える大きな瞳とアドリブありの超自然体の演技は母性本能に訴えかけるよう。とあるシーンの「“ママ”がいい。頭の中ならいいでしょ」というセリフでまずはノックアウトされます。

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また里親のアンナを演じたメラニー・ティエリーは、エルメスやイヴ・サンローランの広告塔も務めたフランスを代表する女優。夫のドリス役はフランス版リメイクで話題の『キャメラを止めるな!』にも出演する実力派俳優のリエ・サレム、実父役を演じたフェリックス・モアティに至っても選りすぐり人選です。