移住のことを他人に相談しても意味がない


移住を思いついたとき、まずは家族や友人、移住経験者に相談しようと多くの人は考えるのではないしょうか? しかし、宇都宮さんはその行為には「あまり意味がない」と言い切ります。そう考える理由は以下の通りでした。

「大切にしたいもの、大切ではないものの判断基準は自分の中にしかないからだ。だからこそ、とことん自問自答したい。逆に言えば、家族の意見に流されるというのもあまりおすすめできない。自分は移住によってなにを実現したいか、現在持っているなにを捨てたいのか、捨ててもいいのかを徹底的に考える。自分基準で決断した行動なら、のちのち後悔する場面も少ない」

他人の意見はあまり意味がないとしながらも、「とことん自問自答したい」と慎重になることに対しては否定しませんでした。そんな宇都宮さんがもう一つの大事な判断基準として挙げたのが、意外にも「直感」。その具体的な例として、東京から長野に移住し、カフェを開いた原西謙嘉さんのエピソードを紹介しています。

「実は原西さん、以前はコーヒーが好きではなく、飲むこともなかったが、東京で働いていた時期のあるとき、好きでもなかったコーヒーの香りになぜか誘われ、初めての店にふらっと立ち寄る。そこで飲んだコーヒーの美味しさに衝撃を受け、翌日にはもうコーヒーの作り方を勉強し始めたのだという。慎重すぎる性格だと自認する原西さんが、移住と起業、しかもまったく縁のなかったコーヒービジネスに足を踏み入れた理由は、このときに出会った衝撃的なコーヒーの味わいだった」

 


直感を信じることで得られる効果とは?


宇都宮さんによると、原西さんに限らず自らの直感を頼りに移住を決行した人は思いのほか多いとのこと。では、なぜ彼らは浅はかにも見える行動に出たのか。宇都宮さんはその理由をこう分析しています。

 

「移住を阻害するネガティブ要因はいくらでも挙げられた。それでも移住を決断した彼らに話を聞くと、『失敗したらどうしよう』という不安をあまり感じていないという共通点があった。一度きりの人生だからこそ、自分の直感に正直になって行動したい。そんな自分の気持ちに素直に従ったがゆえの判断ならば、たとえ苦難が待ち受けていても後悔は少ないのかもしれない」