パラダイムシフトの今、「美の価値観」を刷新し続けてきた美容ジャーナリスト齋藤 薫さんが、注目したいある視点をピックアップします。
この人の引退にも、撤回にも、共感できてしまう私たち……
引退がこれほど注目を浴び、でも引退撤回がまたこれほど騒がれる人は、ハリウッド史においてもいなかったはず。
キャメロン・ディアス。42歳で休業に入り、あまりに長引く休業から、たびたび完全引退の噂が出ていたものの、ちょうど50歳となる今年、映画出演とともに女優復帰を発表したのです。
じつは私たち、その引退も、引退撤回も、何となくですが両方とも理解できてしまう……きっとあなたもそうなのではないでしょうか。
もちろん本人も、理由についてたびたびコメントを出していますが、それを聞く前にピンときてしまう人が少なくないはずなのです。
正直、本人のコメントと内容が多少ずれていたとしても、自分なりの答えに自分自身が納得してしまう、つまりそのくらい、共感できる行動だったということ。
キャメロン・ディアスのインスタより。2018年、女優引退を認め、2019年には俳優業に未練はないとコメント。47歳で代理母出産によって子どもを授かり、2022年、女優引退宣言を撤回しNetflixの新作映画『Back in Action』で女優業復帰へ。
40代50代、そういう年齢になると、どうしても休みたくなっちゃったり、でもまた始めたくなっちゃったり、立ち止まったり歩き出したり、行ったり来たり。また、”もう絶対戻らない”と言ったり、“絶対とは言っていない”と言ったり。そんなふうに説明のつかない迷い方をしてしまうことがよくあって、まさにキャメロンの行動が自分ごとのようによく分かるからなのです。
キャメロンは休業の理由について、米放送局CBSにこう語っています。
「『ちょっと下がって自分を見つめて、全体がどうなっているのか見てみよう。そして、もっとうまくやれること、もっと夢中になれることは何だろう』ってなったの。そして私は活動を休止しました」と。
客観的に自分を見つめ直し、本来の自分を取り戻したい。そういうことなのでしょう。でもそう思うようになった理由を、ちょっとドキッとするような言葉で振り返っているのです。
「自分は、女性としてこうあるべきという理想を押し付けられ、搾取を受け続けた、社会的な犠牲者でした」と。
一方で、「私はなんで、自分自身をこんなにイジメているのだろう? 私の体はこんなに頑張ってきているのに、どうして自分はその体を見下すようなことをしているのだろう?」って。つまりそんなふうに、自分自身を責めたりもしているのです。
もちろん休業の理由って、どこか曖昧で1つでないのかもしれないけれど、それにしても混乱しているのは確か。女優になって約20年、単に疲れてしまっただけでなく、女優キャメロン・ディアスであること自体に深く苦悩し、もう限界であったのかもしれません。
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