「学歴は努力次第でどうにでもなる」とも限らない
教育が課金制である現実を変えるためにアプリを開発しているのに、課金制を導入すれば、貧しさゆえにまた諦める人を生んでしまう。佐奈はそう感じていたのではないかと推察します。課金制に賛成した功は大手不動産グループの一人息子で、裕福な家庭で育ち、佐奈や小鳥とは対照的なバックグラウンドの人物です。
貧困ゆえに進学などで夢を諦めた経験がある人と、当たり前のように親にお金を出してもらえ、不自由なく過ごせてきた人との間に、「課金制」が持つ意味の深刻な齟齬があることが浮き彫りになりました。
これって、現実でもよくあることだと思うのです。
筆者は貧困家庭で育ったため、みんなが当たり前に手にできるものが手に入らないという経験を、幼いころからいやというほどしてきました。
塾や習い事はもちろん、部活さえお金がかかるからとさせてもらえない。
高校も大学も奨学金を借りなければならない。
私立受験や浪人といった選択肢がない。
制服、参考書、教材、PCが買えない。
そもそも家に学習環境がない。
でも、そういった存在は多くの人からは見えていない。視界にすら入っていないのです。学歴は努力次第でどうにでもなるという人もいるでしょう。実際、中には貧困家庭から難関大学に進学する人もいます。しかし、あくまで全体を見れば、進学率や学力は今なお親の所得と相関しています。
東大生の親の所得は「1050万円以上」が最多
日本の最高学府と言われる東京大学を例に見てみましょう。「2020年度学生生活実態調査結果報告書」によれば、東大生の出身校は・中高一貫型の私立校が46.9%を占めトップ。さらに、親の所得においては1050万円以上が最も多く42.5%を占めています。逆に450万円未満はわずか14.0%にとどまっています。
国立大学法人お茶の水女子大学が実施した「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」によれば、保護者の最終学歴が父親、母親ともに高いほど、子どもの学力が高い傾向が見られるといいます。また家庭の蔵書数や、美術館や博物館などに連れて行ってもらえる頻度など、文化資本の要素も子どもの学力に影響を与える場合があります。
Comment