年齢を重ねれば、内臓も年をとって肝臓の機能も落ちる。どうやらこれは、抗えない現実のよう……。さらに樋口先生は2つ目の理由も教えてくれます。

「それは、体内の水分量の低下です。ご存じのように、人間の体内の水分比率は、赤ちゃんの頃は80%と非常に高いのですが、加齢とともに下がっていきます。そして高齢者になると50%台になってしまいます。アルコールを飲めば体内の水分の中に溶け込むわけですが、体内の水分量が少なくなると、アルコールを溶かす対象の量が減るわけですから、血中のアルコール濃度が高くなりやすいのです」(樋口さん)
※参考文献:環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」
 

高齢者は飲酒後の「転倒リスク」が高まる

加齢で酒は弱くなる?コロナ禍のひとり自宅飲みはキケン?「お酒と健康」のモヤモヤを医師が解説_img0
写真:shutterstock

さらに高齢者になると、アルコールを摂取することによって脱水が進みやすいこと、ふらつきによる転倒リスクが高まることにも注意が必要だといいます。

 

「アルコールには抗利尿ホルモンの分泌を抑制する作用があります。つまり、利尿作用により、尿の量が増えるわけです。高齢者はもともと体内水分量が少ないところに、アルコールを飲んでしまうと、さらに脱水が進み、血中アルコール濃度がより高くなってしまいます。また、高齢者はただでさえ転倒しやすいのに、飲酒でそのリスクがより高くなります。飲酒後の転倒が原因で骨折して、寝たきり生活になってしまうというケースもあります」(樋口さん)

葉石さんが目指すように、健康的にお酒を楽しむための「飲酒寿命」を延ばすにはどうしたらいいのか。樋口先生に尋ねると、シニアが注意すべきお酒の飲み方をこう教えてくれました。

「一番肝心なのは、やはり酒量を減らすこと。加齢とともに飲酒量を下げることをお勧めします。厚生労働省も、『65歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である』としています。現在、年齢別の適正酒量については明確なガイドラインはありませんが、目安としては『翌朝目覚めたときに残ってるな』と思うまでの量は飲まないことです。これは、最低限守らなければならないことです。個人差もあるので一概には言えませんが、少量減らすことで満足せず、できれば若い頃の半分以下まで思い切って減らすことをお勧めします」(樋口先生)