まずは、本人が希望するコミュニケーション方法を確認


前提として一番大事なことは、ご本人にとって、どういったコミュニケーションが快適なのかをきちんと確認することです。聞こえがすごく悪いので、「筆談の方がよい」という方もいらっしゃいます。その場合、無理をして話さない方がよいですよね。さらに、ご本人にしかわからないこともあります。たとえば、左耳の聞こえが悪いので、右耳に向かって話してほしい、などです。まずはご本人がどのようなコミュニケーションを希望しているのかを率直に尋ね、その上で、以下の4つのポイントを意識してみてください。

1. 低めの声で話す
繰り返しになりますが、加齢による難聴では主に「高い音」が聞き取りにくくなります。ですので、「低い声で話す」ということを心がけていただくとよいでしょう。

2. 聞こえのよい方の耳に向かって話す
さらに、左右の耳に聴力の偏りがあれば、働きのよい方に向かって話す、ということも大事です。ご本人にしかわからないことも多いので、しっかり確認しましょう。

3. 「繰り返し」よりも「言い換え」を
会話の仕方としては、「繰り返し」よりも「言い換え」が有効な場合が多いです。たとえば、「おばあちゃん、あれ取って」と言ったとします。そして、おばあちゃんが聞こえない時に、「あれ取って」とボリュームを上げて繰り返す、というシーンに遭遇することもあるのですが、それではお互いにとってストレスでしかありません。

ここで考えたいのは、「あれ取って」という言葉の響き自体が聞こえにくい可能性です。そんな時は、同じ言葉をむやみに繰り返すのではなく、言葉を言い換えてみるのです。そして、それで伝わるか、というのを見ていただくことが大事ですね。

4. ゆっくり、はっきり喋る
基本的なことになりますが、「ゆっくり、はっきりと喋る」ということを意識していただくことも大切です。つい、感情的になって大きな声で早口に話してしまっていることはないでしょうか。人によっては、聞こえていないけれども、2回繰り返されたり、怒られたりするのが嫌で、「聞こえているふり」をしてしまう、という方もいます。ですが、実際にはまったく理解していない、ということもあるのです。もし本当に伝わったかがご心配でしたら、発言したことをご本人に繰り返してもらうなどして、理解を確認するのも重要ですね。

 


診察室だけでなく、家でも使えるテクニック


また、環境の助けを借りる、という発想もあります。たとえば、「声」というのは壁で反射して戻ってきます。それゆえ、診療室では患者さんに壁の前に座ってもらい、その反射の音も利用する、というテクニックを使うこともあります。

また、基本的なことですが、大事な話をするときは一旦、テレビの音や雑音を消して、しっかりと注意を向けてもらうことも必要ですよね。環境の調整というのも大切なポイントです。

耳の遠くなったご家族とのコミュニケーションが上手くいかず悩まれた時などに、ぜひ参考にしてみてください。

「高い声より低い声」。耳の遠い人にも伝わる話し方の意外なコツ4【医師が実践】_img0

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写真/shutterstock
構成/新里百合子
 

 


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