夫たちは何がわかっていないのか?


まず冒頭に挙げた、夫たちの言動を考えてみましょう。風邪を引いた妻に「俺のご飯はいらない」と言う人は、妻も食事をすること、そして回復するためには栄養を摂る必要があることを忘れています。ゴミ出しをする夫は、その前に、ゴミ箱を家じゅうから集めてゴミをまとめ、捨てた後のゴミ箱を戻すなどの作業があることに気づいていません。同じく、入浴する前に子どもの服を脱がせる、入浴後は子どもの身体を拭いて服を着せる、という作業があることにも気づいていないでしょう。入浴後に裸で走り回りたがる子どももいます。じっとしていない子の身体を拭いて服を着せるのは、たやすいことではありません。

風邪で寝込む妻に「俺は外で食べてくるから」...自称“理解がある夫”がわかっていない家事の話_img0
 

炎上し話題になった男性の言動に関しても、同じことが言えます。ポテサラおじさんは、ポテトサラダが手間のかかる料理だとわかっていません。ジャガイモをゆでてつぶす、という作業は時間がかかるので、簡単な料理ではないのです。刺身パックも、必ずしも皿に移し替えることが正しいとは言えません。スーパーなどでは、模様がついた皿のようなパッケージに、料理屋のように美しく刺身を盛りつけて売っていることが多いからです。しかも「結婚した意味がない」とは、まるで妻を料理人として雇ったかのような暴言です。

 

松井市長はご存じなかったかもしれませんが、台所を担う人の買い物は、紙に書かれたリストに従って買ってくるお使いとはまるで違う行為です。日々の食事をまかなうには、少なくとも下の7つの要素を組み合わせて献立を考えながら、買う物を決める必要があります。

風邪で寝込む妻に「俺は外で食べてくるから」...自称“理解がある夫”がわかっていない家事の話_img1
 

1. 昨日は何を食べたか、子どもの給食の献立は何か、と前後の食事との連続性を考え、重ならないように配慮すること。 

2. 1と関連して、栄養バランスを考えること。

3. 家族の体調に配慮すること。

4. 家族の好みを考えること。

5. 急に暑くなったから冷たい料理を加える、寒くなったから身体を温める料理にする、といったように、その日の天候に配慮すること。

6. 家計に気を配り、予算の範囲内に収めること(物価高の昨今、この問題に頭を悩ませる人は多いでしょうが、毎日安いからと毎日モヤシばかり食べていると、今度は栄養バランスが悪くなります)。

7. 使い切らないといけない食材があれば、それに合うものを買うなど、家に残っている食材と調整すること。

このように、たくさんの要素を組み合わせて最適解を出さなければならないので、決められたものを買うだけの人より時間がかかるのです。買い物をしながら献立を決める人であれば、野菜を選んだ後に、肉や魚の売り場で見つけた食材に応じて献立を変えたため、野菜売り場に戻って別のモノに替える、といった行動をする場合もあるでしょう。