見落とされている「名前のない家事」


家事には、こうした複雑な要素が絡まって行われているモノが多いのです。一つ一つは単純作業でも、積み重なって作業量が膨大になり、家事の担い手を疲弊させます。その大変さを、家事をほとんどしない夫は気づいていないかもしれません。

夫たちに見えていない家事の代表例は、最近「名前のない家事」と言われるようになったものです。2020年に放送されたNHKの朝の連続テレビ小説『エール』でも、二階堂ふみ演じるヒロインの音が、夫と娘から「お母さんがジッとしているとこ、見たことない」と言われていました。考えてみれば、この発言も失礼です。お母さんがジッとしていられないのは、名前のない家事がたくさんあって休んでいる暇がないからです。

風邪で寝込む妻に「俺は外で食べてくるから」...自称“理解がある夫”がわかっていない家事の話_img0
 

先ほどの夫たちが気づいていなかったことも、名前のない家事です。料理、掃除、洗濯といったメインの家事の周りにも、名前のない家事が膨大にあります。例えば食器洗浄機がない家庭で洗い物を引き受ける夫たちは、使った食器を流しまで下げてくる、洗った食器を拭いて元の場所に戻すといった作業は行っているでしょうか? シンクやコンロの周りを拭き上げて生ゴミを捨て、布巾も洗っているでしょうか? たまに料理をするとして、使ったボウルや鍋なども洗っているでしょうか?

 

あるいは日々の暮らしで、着替えるとき、脱いだ衣類は片づけているでしょうか? リモコンを使った後、所定の場所に戻しているでしょうか? 元に戻す行為を家族が習慣づけていない場合、「片づける」という家事が増えます。必要なときに必要なものが見つからない、というトラブルも発生します。家族が所定の場所をわかっていなかったり、戻す習慣がついていない場合は、いちいち「お母さん、つめ切りはどこ?」などと聞かれ、取り出して渡すという家事も発生してしまいます。もちろん、家事の担い手も家族も、それぞれ片づけが得意な人と苦手な人がいるので、この家事を減らせるかどうかは簡単に結論が出せませんが……。

風邪で寝込む妻に「俺は外で食べてくるから」...自称“理解がある夫”がわかっていない家事の話_img1
 

夫と家事をシェアしている、という女性に、どのぐらいの割合で分担しているのか聞くと、「私が7で、夫は3かな」「8対2で私が多いかな」などと答える人がいます。もしかすると、それを聞いた夫は「俺も半々で料理や掃除を分担している」とムッとするかもしれません。夫婦間で認識が食い違っている可能性もありますが、ほとんどの夫は名前のない家事の存在に気づいていないのではないでしょうか。