奈緒の演じる新しい「お仕事もの」ヒロイン像


これまで男性社会で戦う女性主人公のドラマはたくさんありました。かの大ヒット朝ドラ『あさが来た』や、この夏今田美桜さん主演でリメイクされた『悪女』など……。でもどの主人公も、天才的なセンスを持っていたり、全てを凌駕するような人間的魅力があったりと、“逸材”ばかりです。そしてその能力を生かし何とか男性たちに認められようと奮闘する、という描かれ方がほとんどでした。

しかし和佳は違います。男性に負けない能力があるかとか、男性社会で認められるかとか、そんなのどうでもいい。それよりも大事なのは自己実現。むしろその達成において、“長いもの”である男性社会は“使わせてもらう”存在なくらい。これが私が、お仕事ものドラマの女性主人公もここまできたか……と感慨深いものを覚えてしまったワケです。

何より説得力を感じるのは、このドラマが実話ベースであること。おそらく「かつて長いものに巻かれた」エピソードはフィクションだと思いますが、それでも完全なるファンタジー作品ではないゆえ、和佳の自己実現ストーリーには大きな現実味を感じるのです。だからハマる……。


ドラマのモデルとなった、「船団丸」を率いる株式会社GHIBLI 代表取締役の坪内知佳さん。

さて肝心のドラマですが、紆余曲折を経て和佳はとうとう片岡たちの会社の社長に就任します。おさかなボックスも本格的に始動することとなりますが、まだまだ難題は多そう。それを彼女が、男だ女だ関係なく、ただただシンプルに“自分がやりたいこと”としてどう戦っていくのか――、頼もしく見させていただきたいと思います。

 


取材・文/山本奈緒子
構成/坂口彩
 

 


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