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「女の仕事は子を生むこと」家父長制の悲惨さに斬り込むドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』新章が凄い！【国際女性デー】

2023.3.6

長谷川朋子

３月８日の「国際女性デー」に合わせて、これまでミモレで紹介してきたエンタメ作品からこれぞ、という名作を改めてピックアップ。世界的人気のドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』初のスピンオフ作品『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』で描かれるのは、厳しい家父長制に抗う女性たちの物語。その魅力を長谷川朋子さんが解説します！

※元記事は2022年10月22日に公開されたもので、作品の情報等は公開当時のものです。

３月８日「国際女性デー」とは？
国や民族、言語、文化、政治といったあらゆる違いを超えて、これまで女性たちが達成してきた成果を讃える日です。

発端は1908年、米・ニューヨークの女性労働者が起こした待遇の改善を求めるストライキ。これを機に、女性の権利や政治的・経済的な社会参加を求める動きがヨーロッパ全域へと広がっていきます。決定打となったのは1917年、第一次大戦下のロシアで起こった「二月革命」です。女性たちの“パンと平和”を求める抗議は、男性たちや兵士らをも巻き込んだ民主革命へと発展します。結果、ロシア皇帝による帝政は崩壊。暫定政府は女性の選挙権を認めました。

この二月革命が起きたのが３月８日（当時のロシアではユリウス暦２月23日）でした。国際婦人年である1975年に、国連はこの日を「国際女性デー」とすることを発唱。77年に制定されました。

最強の海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』初のスピンオフ作品『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』がまもなく最終回を迎えます。私利私欲にまみれた登場人物たちが織り成す人間ドラマと、鉄板のダークファンタジーが絶妙に掛け合わされて見応え十分。敢えての女性軽視の時代設定も新鮮に映り、中世ヨーロッパ風のコスチューム・ドラマとしても楽しめます。ドラゴンを操るターガリエン家の血で血を洗う物語の見るべきポイントをある程度のネタバレ含めて解説します。

※本稿はドラマの重要な展開にふれています。未見の方はご注意ください。

嫉妬と欲望、裏切りが入り交じるターガリエン家の物語

良作ドラマを大量に送り出すアメリカHBOの代表作と言えば、エミー賞史上最多受賞記録を持つ『ゲーム・オブ・スローンズ』です。ボリュームたっぷりの全８シーズンが完結してから初のスピンオフ作品として『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が今夏から全世界で配信開始されました。

日本でもU-NEXTで8月22日から配信が始まってから、毎週１話ずつ更新されるなか、10月24日にいよいよ最終回（エピソード10）を迎えます。１話では初々しい10代だった主役の王女レイニラがすっかり大人の女性になって、もう30代。その成長スピードに追いついていくのに少々難ありですが、思慮深さと大胆さを併せ持つ魅力的なキャラクターではあります。

そんな王女レイニラを前半戦は若手女優のミリー・オールコックが、後半戦はノンバイナリーとして公表している演技派のエマ・ダーシーが演じています。

ジョージ・R・R・マーティンの小説『炎と血』を原作に、舞台はゲースロから200年前までさかのぼり、１世紀にわたって無敵の支配を続けてきたドラゴンを操る「ターガリエン家」の血族の話に徹します。ドロドロとした血が脈々と流れ落ちるオープニング映像からは物語上、最も強力でワケアリな家族を描いていることが伝わってきます。

もちろんゲースロシリーズですから、ターガリエン家の繁栄を讃えるような話ではありません。王朝崩壊の危機にさらされた崖っぷち状態のファミリーメンバーが内輪で嫉妬し合い、欲望にまみれながら、そして裏切り行為も入り交じります。恋愛劇も複雑さを極めます。なかでも前後編にわたって、マット・スミス演じる叔父のデイモンと王女レイニラがいちゃつく関係はどうしたってザワつかせます。

友情劇も一筋縄にはいきません。王女レイニラの幼馴染で、ゲースロお馴染みの「王の手」と呼ばれる宰相職の娘アリセントとは確執が深まる一方。したたかなアリセント役をオリヴィア・クックが安定の演技で魅せてくれます。