「完璧なお母さん」と「可愛げがない娘」の不器用な悪循環


石田えりさん演じる寛子は、女手ひとつで3人の子供を育ててきた母親。井上真央さん演じる夕子は、その母親の苦労をずっと見てきた長女です。反りの合わない母娘を演じるお二人の対談は、まずは脚本の第一印象から始まりました。

井上真央さん(以下、井上):「毒親」みたいなものがテーマなのかなと思っていたんですが、そうではなくて。どこにでもいる母娘の日常のすれ違いが静かに描かれていました。

石田えりさん(以下、石田):私は最初に読んだ時は、このお母さん、もうちょっと賢くなればいいのにな、と。娘とちゃんと普通に話せないんですよね。母娘って感情的になったらもう話せない、自分の気持ちを冷静に「こう思ってる」って伝えないとだめだと思うんですよ。目を見て普通に言えばいいのに、何か別のことしながらチクーッ、っと言ったり。他人の目があるときに、やたらと「お母さん」っぽくふるまうのとかも。ちょっと不自然なくらい。

 

井上:私はこういうお母さん、嫌いじゃないですよ(笑)。妹の晶子が言うように、「女手ひとつで3人の子供を育てた」寛子は、夕子にとっては「完璧なお母さん」なんですよね。それが「そうはなれない自分」にとっては負担だったのかもしれません。

 

石田:夕子は内に秘めてしまうんですよね。きっと親としてはいろいろ思うじゃないですか。「もっとこうしてくれたら、可愛いげがあるのに」とか(笑)。

井上:可愛げがないんですよね(笑)。

石田:母親を遠ざけている感が伝わってくるんだけど、でもお母さんもざっくばらんに「なんでそうなの?」って聞けない。だから、ついイライラして感情的になって、ガツッ!と言っちゃう。悪循環なんですよね。

井上:そして不器用です(笑)。「こうあってほしい」という母親の思いもわかるけど「そうなりたくてもなれない自分」がいるし、「分かってほしい」と思いながら「どうせ理解し合えないだろう」とも思ってる。