母娘の緊張感が最も高まった場面では、現場の空気もしんどかったです(笑)。


小さな「あるある」が積み重なり、二人の関係はやがて緊張を帯びてゆきます。お二人が「最も難しかった」と口をそろえるのは、その緊張感が最も高まった場面。帰りの遅くなった夕子を、寛子が叱る場面ーーたまりにたまった感情が爆発すると思いきや、意外にもそうはならなかったのだとか。

悪いのは母?それとも娘?こじれた親子関係を描いた『わたしのお母さん』【井上真央×石田えり】_img3

 

石田:夜遅く帰ってきた夕子を叱る、初めて対峙するあの場面は、結構大変でした。

井上:大変でしたよね、あれは。

 

石田:初めて対峙するシーンだから、たまってきた鬱憤が、どこかのタイミングでバーン!と思わずくるのかなと思っていたんです。でも実際やってみたら、言えば言うほど離れていくので、「え?! え?!」ってなって。また真央ちゃんのたたずまいが、迫力があるんですよ。最後は完全に離れてしまって、母親がひとりでキレているというお芝居になってしまいましたね。

井上:えりさん、あの日は一日中キレてましたよね。

石田:きつかった。現場の空気もしんどかったですね(笑)。

井上:脚本には、母に対し怒りを孕みながらゆっくり立ち上がるとあって。夕子がこれまでに見せたことない反応をするのですが、一度テストをしたときに、えりさんの顔をみたら、いろんな思いが交錯して、泣いてしまって。でも夕子は小さいころから、本音を言ったり、甘えたり、泣いたりができなかった。だからこそ苦しんできたし、すれ違ってきてしまったので、ぶつかるというよりは、精一杯向き合おうとするけど、また気持ちに蓋をしてしまう。そんな諦めを自分の中で意識したように思います。

石田:現場では「こういうふうになるの?」っていう感じでしたけど、映画を見たら「ああ、こういうこともありだったな」って思いました。でも難しかった。お母さん一見強そうだけど、よーくみると弱いんですよね。なんだかもう、すごい必死で。

井上:難しかったですね。