具体的な行動をあらかじめ決めておこう
弾道ミサイルが「威嚇」で済むのかどうかは、私たちにはわかりません。警報が鳴ってからの行動も大事ですが、本書では「警報が鳴ってからどう行動するかを決めるようでは、生き残ることは難しい。そうなったときにどうすべきかを、あらかじめ計画しておくことが極めて重要である」と伝えます。自宅にいたときにミサイルが飛来したら、ただ伏せる、ただ逃げるというだけでは具体的な計画とは言えない、と指摘。
「例えば2階に上がり、まず戸棚を壁際に寄せる。そして、次に雨戸を東側から閉めて、ゴーバッグを持ってベッドの脇に伏せる。家族がいるのなら、誰がどこに伏せるのか、どういう向きで伏せるのか、だれがどの荷物を持つのか、そして脱出経路は、といったことまで考えて初めて計画と呼べるのだ」
このように、どんなことを、どのような順番で行うかを決めておくこと。勤務先や通勤電車、深夜の就寝中といったシチュエーション別、さらには学校に通っている子供はどう保護するかなども考えておくことが重要だそう。
「考えられる状況ひとつひとつについて行動を具体的に考えておくことができれば、もしものときに行動を素早くできるし、精神的にも落ち着くことができる。また、こういう計画を自分だけでなく家族や同僚とも共有しておくことが大事である」とする本書。次なるJアラートの警報、そして万が一のときに備えるべく、ぜひ本書を役立ててみてはいかがでしょうか。
なお、「内閣官房 国民保護ポータルサイト」の「弾道ミサイル落下時の行動に関するQ&A」も、合わせて参考にしたい情報のひとつです。
※本書は特定の国を想定しているものではなく、架空の戦場を想定した戦場サバイバルマニュアルです。ただし、一部に日本を例とした言及がありますが、あくまで内容の補足を目的としたものです。
著者プロフィール
(株)S&T OUTCOMES(エスアンドティー アウトカムズ)
陸上自衛隊へのロープレスキュー及び戦闘技術指導。陸上自衛隊及び民間企業へのプロテクション教育。行政関係、大手警備会社への対テロセミナーの実施。綜合警備保障株式会社からの受託にて、JICAの研修業務に講師を派遣。国内資源開発企業、国内総合商社、大手新聞社など、海外へ社員を派遣する企業に対する危機管理担当者向けの対テロセミナー、海外渡航者向けの安全研修を実施。大手外資系企業の本社、物流施設の施設警備業務、国際NGOとの危機管理研修の連携、子供支援に関わるNPO団体との連携など、各種警備業務、警護業務を実施。
川口 拓(かわぐち・たく)さん
自然学校「WILD AND NATIVE 」を主催し、地球とのつながりを感じる自然体験プログラムを実施。2013年、一般社団法人「危機管理リーダー教育協会」を設立。テレビ、雑誌などメディアへの企画協力や出演も多数。CMLE災害対策インストラクター養成トレーナー、CMLEブッシュクラフトインストラクタートレーナー、自衛隊危機管理教官、自衛隊サバイバル教官。著書に『ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル』(誠文堂新光社)などがある。
『民間人のための戦場行動マニュアル:もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる』
著者:(株)S&T OUTCOMES、(一社)危機管理リーダー教育協会 川口 拓 誠文堂新光社 1650円(税込)
自衛隊のサバイバル及び戦闘訓練教官を務めた著者が、戦争だけでなく、テロやクーデーターなどを想定して、民間人が身を守るための方法を伝える本書。開戦前、ゲリラ攻撃とテロリズム、開戦、占領など、考えられるさまざまなシチュエーション別に、私たちが「できること」をわかりやすいイラスト付きで解説します。家族と平時から備えておきたい、もしものときの知識が満載。
イラスト/ササキサキコ
取材・文/金澤英恵
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