ミモレで活躍するエンタメライター7名による、今年公開のコンテンツから自由にベスト5を選ぶ【エンタメベスト2022】。ラストを飾る須永貴子さんは、日本映画、外国映画、地上波ドラマ、配信オリジナル作品(国内と海外)から1本ずつセレクトしてくれました。皆さんのお気に入りの作品はありましたか?
日本映画
『さかなのこ』
日本映画で最も心に残った作品。魚への愛を貫いて、唯一無二の存在になったスーパースター、さかなクン。彼の自叙伝を元にした本作を見て、「好きなことがある人がうらやましい」などと軽く言ってはいけないなと自分を律しました。
『横道世之介』の監督・沖田修一と脚本の前田司郎コンビは、本作に“ギョギョおじさん”というキャラクターを創造しました。ギョギョおじさんを簡潔に説明すると、好きなことを貫いた結果、町の変わり者になってしまった人。その姿には、さかなクンが今のように成功していなかったらこうなっていたかもしれないと想像させる力があります。その影の部分をきちんと描き、しかもさかなクンに演じさせたことで、主人公のミー坊(=さかなクン)にとっては魚(と魚の絵を描くこと)が人生を突き進む原動力であると同時に業でもあることが明示され、人物像と物語が厚くなっているのです。
ミー坊を演じるのんは、文句のつけようがないはまり役。それ以外で特に注目してほしいキャラクターは、高校時代のシーンに登場する、幼馴染のヒヨ(柳楽優良)、総長(磯村勇斗)、カミソリ籾(岡山天音)らのツッパリ軍団。彼らを主人公にしたスピンオフを作ってほしいくらいチャーミングです。
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