配信オリジナル作品(日本)
『モアザンワーズ/More Than Words』
配信オリジナル作品(日本)のおすすめは、愛し合う男性のカップルと、2人にずっと愛し合ってほしいと願う女性の約10年間を、京都を舞台に描く群像青春ドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』。
高校生の美枝子(藤野涼子)と同級生の槙雄(青木柚)は、バイト先でゲイの大学生・永慈(中川大輔)と出会い、すぐに親友関係に。3人の間にある吸引力や、脚本があるとは思えない自然なおしゃべり、言葉にならない(=モアザンワーズ)感情を切り取る長回しのカメラワークが、CMの入らない1話約30分の配信ドラマと非常に相性がいいんです。
槙雄と永慈の恋、その先に待ち構える障害、美枝子の若さゆえの愚かな奇策の結果、槙雄は2人の前から姿を消すことになり……。出会いにより世界が広がっていくキラキラした前半に対し、後半はトンネルに迷い込んだ槙雄と隣人・朝人(EXIT 兼近大樹)の関係性を切なく綴り、最終的には青春に落とし前をつけた槙雄の表情が余韻を残します。
全10話にくるりやSTUTSら4曲の主題歌が割り当てられ、映像も毎話異なるエンドロールは、物語の繋ぎ目になりつつ視聴者の感情を途切れさせない上等なインターバルに。好きなアーティストの曲が使われているエンドロールから見てみるのも、作品に触れるとっかかりとしてありかもしれません。
海外映画
『アムステルダム』
外国映画では、友情、ロマンス、青春、犯罪ドラマをウィットに富んだ手さばきでエンターテインメントに昇華させたデヴィッド・O・ラッセルの『アムステルダム』を選びました。
1930年代のアメリカで、殺人の容疑をかけられた医者のバート(クリスチャン・ベール)と弁護士のハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)が、数年ぶりに再会したヴァレリー(マーゴット・ロビー)の協力を得ながら、無実を晴らすために奮闘するクライム・ストーリーが本作の本筋です。そこに、ドイツのファシズムがアメリカに入り込もうとした驚愕の史実が絡む展開は、韓国の統一教会と日本の政治家の癒着や、ドイツのクーデター未遂事件などが明るみに出た2022年に生きる我々にとって実に生々しく映ります。
一件落着後、よりを戻したハロルドとヴァレリーはアムステルダムに戻って新生活を始めようとします。なぜならアムステルダムは3人が若い頃、輝くような数ヶ月を過ごした青春を象徴する街だから。しかし、政府が手配した船の行き先はアムステルダムではない、どこか他の国でした。それはつまり、青春時代には二度と戻れないということ。エンドロールでアムステルダム時代の幸せなシーンに続いてタイトルの文字がバンッと掲出した瞬間に、自分にとってのアムステルダム(=戻れない青春時代)が去来して涙腺が崩壊……!
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