人に褒められたとき、いつもどうリアクションしていいのか困ってしまう。

わかりやすい例を挙げると、洋服だ。「そのニット、素敵ですね」と声をかけられる。とてもうれしい。とてもうれしいんだけど、うれしさと同時に褒められた恥ずかしさによって、つい「いやあ、安物なんで!」とか「めっちゃ毛玉ついてるんですけど」とか余計なことを口走ってしまう。

基本的に自虐くらい好きにさせてくれよ〜党であることに変わりはないのですが、そんな僕でも人の褒め言葉に対して自虐で返すのが悪手であることくらいはわかっている。褒められたら素直に「ありがとう」とお礼を言えばいいのである。

が、言えない。相手がそんなこと思っていないとわかっていても、つい「社交辞令で言うただけやのに、なに真に受けてるん?」と思われていないだろうかとか、「え? この人、自分で自分のことオシャレやと思ってるん?」と見られていないだろうかとか、マイナスなことばかり考えて、掘らなくていい墓穴を掘ってしまう。たぶん僕が39年の人生をかけて掘りまくった墓穴は、地球を貫通してそろそろブラジルあたりに到達していると思う。

「そのニット、素敵ですね」にどう答える?褒められるのが苦手な僕が“返しの最適解”を考えてみた話_img0
 

そこで、洋服を褒められたときにどういう返しがスマートか、自分なりに考えてみた。

 


【まずは積極的に肯定してみる】

「これ、めっちゃお気に入りなんです」
(自分じゃなくて、洋服に対する言及なので、自己肯定感の低い僕でもギリギリいけそう)

「この柄(色)がいいなと思ったんですよね」
(具体的な箇所を挙げると相手との会話も膨らみます)

「洗濯機でそのまま洗えて痛まないのがいいんですよ〜」
(これくらいの生活感のある返しがいちばん鼻につかないし相手も共感しやすい気がする)

「肌ざわりがいいんです。さわってみてください」
(モテ仕草がすごい。石原さとみじゃないとできない)


【いっそ知識を開陳してみる】

「代官山の×××で買ったんですよ〜」
(場所とブランドによる。代官山はちょっとイラッとするので、新宿ルミネくらいが限界)

「△△△って今季からデザイナーが変わったんですよね」
(専門家アピがウザい。無理)

「このニット、イギリスのウェールズ地方で育った羊の毛だけを使っているため、ハリと弾力性があるのが特徴で、さらに熟練の職人によるリンキングが素晴らしく……(以下略)」
(相手も興味があったら話が弾みそうだけど、高確率で“隙あらば自分語りおじさん”って呼ばれそう)

全体的にこっちの路線は僕には無理がある。撤退!


【さっと話題をすり替える】

「□□□さんのワンピースもすっごく素敵です」
(褒めには褒めで返す大人の会話術)

「すっかりすっかり寒くなって、いつ厚手のコートをおろすか悩みますよね」
(気候の話さえしていれば、大体の会話はなんとかなる)

「これに合わせるジャケットが今ほしいんですよね」
(悪くない気がする。なんかここから会話が広がりそうだし)

「これ、ネットで買ったんですけど、ネットで買うときってサイジングに悩みません?」
(とりあえず誰でも「わかる〜」と頷ける話題さえ振っておけば、あとは野となれ山となれ)

「いや〜、最近自分も年をとってきて、次はどういう服を着ればいいのか悩み中なんですよ〜」
(わりと切実なテーマではあるんだけど、自分からわざわざ加齢アピールをするのも、このご時世的にはアウト?)

 
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