賃貸住宅から住人を強制的に退去させる家賃保証会社の契約条項について、違法とする判決が言い渡されました。一部の家賃保証会社は強引な方法で住人を退去させるケースがあり、問題となっていましたが、今回の判決によって借り主は、安心して入居できるようになります。極めて妥当な判決といえますが、この司法判断は入居者にとってメリットばかりなのかというとそうとは限りません。

賃貸住宅を借りる際、一部の住宅については家賃保証会社が間に入るケースがあります。家賃保証会社というのは入居者から毎月一定額の保証料を取る代わりに入居者が家賃を支払えなくなった場合、入居者に代わって大家さんに家賃を支払う役割を担っています。

日本の賃貸住宅は、基本的に保証人を立てることが大原則となっており、保証人がいない場合、なかなか入居できないという問題がありました。最近では地縁血縁が薄くなる傾向があり、社会はより個人主義になっていますから、保証人がいないと入居できないということでは経済が回らなくなってしまいます。一連の事態を解消する手段として伸びてきたのが、上記の家賃保証サービスです。

このサービスは、うまく活用すれば、入居者にも大家さんにもメリットがありますが、一部の家賃保証会社は脱法的な行為を行っていると指摘されてきました。

保証会社の契約の中には、入居者が家賃を滞納したり連絡がつかなくなった場合、「物件を明け渡したとみなす」という条項が入るケースがあります。一部の家賃保証会社はこの条項を理由に、家賃を滞納した入居者を強制的に追い出す行為を行っていたのです。

イラスト/Shutterstock

今回の裁判では、一連の条項は「追い出し」を目的としたものであり、居住権を侵害しているのではないかという点が争われました。最高裁はこの主張を認め、条項の使用禁止と契約書の破棄を命じたのです。つまり、今回の判決によって、今後は勝手に鍵を変えたり、強制的に入居者を追い出すことができなくなります。

 

一方的に家を追い出される心配がなくなるわけですから、入居者にとっては大きなメリットといえますが、必ずしもこの判決が全面的に借り主のメリットになるとは限りません。

大家さんからすると、一度、家を貸してしまった入居者に対しては、家賃の滞納があったり、連絡がつかないという事態が生じたとしても、しばらくは状況を受け入れるしかありませんから、賃貸住宅の収益が著しく悪化します。このため、大家さん側は審査をより厳しくする可能性があり、所得が低い人や、定期的な収入がない人、あるいは高齢者などは家を借りにくくなる影響が懸念されています。

 
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