自己愛性人格障害と思われる夫からのモラハラに耐えていた涼子さん。出産後、夢だった古着屋をオープン、必死に切り盛りしますが夫の精神的DVは苛烈になっていきます。夫の失業をきっかけにモラハラはひどくなり、「俺がいなくなるとどうなるか思い知れ」と出て行った彼。経済的に困窮させ、妻を困らせる狙いのほかに、浮気をしていたことも発覚します。後編では、離婚するために涼子さんがとった作戦を検証します。

前編はこちら
「お前の育児が下手だから赤ん坊がガリガリなんだ」歪んだ夫の、他人に見せない狡猾な攻撃>>

中編はこちら
追い詰められた妻が賭けに出る...予想外すぎる「モラハラ夫への対処法」とは?>>

 
取材者プロフィール
涼子さん(仮名)36歳、輸入雑貨店で勤務。小学生の娘を連れて昨年離婚。    
 

出て行ったモラハラ夫と、すがる妻


「夫は所在不明、家賃も生活費も振り込まれないので、子どもを抱えて生活費を稼ぐ必要があり、必死でした。そのうえ、彼が女性と親密な雰囲気で飲んでいたと知人から複数の通報が。ますます絶望的な気持ちになりました。

古着店は黒字を保っていましたが、それはスタッフを極力増やさず、自分がなんでもやっていたから。作業は深夜にしていましたが、家族の時間を犠牲にしている側面もあったと思います。夫に繰り返し糾弾されて、妻として、母としてふさわしい働き方がほかにあるのでは、そうすれば状況が変わるのではと悩みました。この期に及んで、夫婦関係を再構築する方法を考えていたんです」

当時を振り返り、「夫婦は合わせ鏡というから、自分が変われば相手も変わると信じてしまいました」と語る涼子さん。10年近く、配偶者からモラハラを受け、耐え続けた弊害とも言えます。客観的に見れば、モラハラを繰り返し、家賃も生活費も入れず、勝手に出て行った挙句に浮気をしている夫とは離婚するべきだと思いますが、涼子さんがとった方法は驚くべきものでした。

「断腸の思いでしたが、生活を変えるため、お店を知人に譲渡しました。少し現金ができたので、その一部で手に職をつけるためにWEBデザイナーの通信教育をスタート。月に4回学校に行けばOK、残りは自宅でオンライン授業と課題に取り組むスタイルだったので家事育児と両立できました。週4日は子どもを保育園に預けて近所の輸入雑貨店でパート勤務です。夫には『もうお店も閉じて、これまでのように家にプレッシャーを持ち込むことはありません。収入を増やせるように、副業の準備もしています。だから戻ってきて、やり直したい』と伝えました。……今話していて、どうしてそこまで下手に出る必要があるのかさっぱりわからないのですが(笑)、当時は子どものためにも、家族を再構築したいと思ってしまったんです」

ほら見たことか、俺がいないとやっていけないんだろ、と夫は嬉しそうに笑ったと言います。そして自宅に戻り、3人の生活が始まりました。そこで起きた変化は予想外のものでした。