作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた佐野倫子。その赤裸々な声は、まさに「事実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく令和の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回検証するのは、10年もの間、自己愛性人格障害と思われるモラハラ夫との関係性に苦しみ、子連れで離婚に成功した方のケース。伺うほどに、配偶者による精神的なDVは根の深い問題だと絶句する場面の連続でした。

 
取材者プロフィール
涼子さん(仮名)36歳、輸入雑貨店で勤務。小学生の娘を連れて昨年離婚。    
 


「村」から東京へ。上京した彼女を待ち受ける数奇な出会い


「私は地方都市から電車で3時間ほどの、小さな村で育ちました。小さい頃からファッションが大好き。高校生のとき初めて東京に来て、下北沢の洋服屋さんや雑貨店に行ったときの興奮といったら……ご想像いただけますか?

この時、古着屋さんを開きたい、どんなに時間がかかってもいいから、自分がいいと思うものを集めてお店を作ろうって決めました。ちょっと唐突ですよね、自覚しています(笑)。でも本当に感激して。一本気な性格なもので……。そのために、高校を卒業してすぐに上京、派遣社員として働きながら、夕方から海外ともつながりがある古着屋さんでアルバイトをしました。ゼロから現場で仕事を覚えていく作戦です」

35歳という年齢よりも若々しく見える涼子さん。明るい笑顔に、おっとりした雰囲気の女性で、上京のエピソードからうかがえる直感的な行動力がどこから湧いてくるのか不思議なほどです。しかしその芯の強さ、まっすぐな情熱は、取材中にも言葉の端々に滲み出てきます。

涼子さんは、派遣事務職に加えてアルバイト6時間というハードな二足のわらじ生活をなんと4年間続けます。5年目の24歳の頃、古着店の経営会社から、社員になって店長職に就かないかと嬉しいオファーが。それまでの涼子さんの、普通のアルバイトスタッフと一線を画す、猛烈で実直な働きぶりが評価された前例のない抜擢でした。

雇用されている身ではありますが、店長となった涼子さん。いつか自分のお店を持つという夢に向かって、一層邁進していたある日、「運命を変える」出会いがありました。

のちに夫となる、圭佑さん(当時29歳)の登場です。