免疫のトレーニングとは?私たちは免疫とどう付き合っていけばいい?


編集:免疫のトレーニングというと……予防接種でしょうか?

山田:正解です! 免疫を、特定の病原体に準備された状態にトレーニングする機会を与えてくれるのが、予防接種です。

 

編集:「免疫とはなにか」がイメージできると、予防接種の重要性がますます理解できますね。予防接種以外に、すべきことはありますか?

山田:体調が良好で、病気など特段の事情がない方は、免疫機能を正常に保つためにすべきことは、特にありません。健康な状態=体の免疫機能が正常に働いている、と考えてよいでしょう。

編集:あまり思い悩む必要はなさそうですね。

山田:はい。一方で、そうでない方もいらっしゃいます。「自己免疫疾患」といって、免疫の一部が暴走し、自分の体を攻撃し、健康を害されている方もいます。その場合、暴走した細胞を止めるため、免疫機能の一部を止める免疫抑制剤というお薬を飲みます。

あるいは、免疫のチームワークを乱すような病気もいくつか知られています。たとえば悪性腫瘍があって抗がん剤を投与している場合や、一部の白血病のように免疫を担当する細胞自体ががん化した場合など、免疫を担当する細胞が壊され、うまく機能しなくなった場合には、チームワークが乱され、免疫機能が低下するのです。

また、年齢とともに免疫のプレーヤの一部の機能が低下していくことも知られていますね。

編集:なるほど……。病気や加齢などで、免疫機能が低下するのですね。

山田:はい。加齢とともに低下する免疫機能を維持する有効な方法は、実は分かっていません。ただ、高齢者では、「痩せ」が問題となって、栄養状態が悪い方が増えます。これが免疫機能の低下と関連があることは繰り返し言われているので、「痩せ」で低栄養状態の方は、しっかりと栄養を摂ることが、免疫機能を維持することに繋がるのかもしれません。

ただ、そういった事情がない場合には、免疫機能は正常に働いていると捉えていただいて良いですし、そこに足し算をすることの意味は知られていません。大切なのは、手洗いやマスクといった感染予防策、予防接種で防げる感染症を可能な限り防ぐという基本だと思います。

編集:「免疫力がアップする食材」などと聞くとつい購入したくなりますが、あまり気にせずに過ごしたいと思います。本日もありがとうございました!

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構成/新里百合子
 

 


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