仕事での成功パターンを介護でもやろうとする

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川内 ちょっと違います。だんだん分かってきたんですが、こうした優秀なビジネスパーソンは、介護に対しても真面目に、前向きに、まさに仕事と同じように取り組むのです。考えてみれば、仕事ができる人なら、「これまでの成功体験を介護でも適用しよう」と考えるのは無理ないですよね。しかし、会社員が仕事に向かうような態度で介護に取り組んでしまえば、それは、親も子もまず間違いなく不幸になってしまう。

――仕事のやり方で介護をやろうとすると不幸になる。理不尽なことが次々起こる介護は、仕事の考え方と相性が悪い、ということですね。

川内 そう、そこを詳しく見ていきましょう。優秀な会社員は、仕事に対して目標を設定し、綿密なスケジュールを立て、自ら汗をかいて実行します。その「目標」とは、ほとんどの場合、「成功」「成長」という結果にリンクしているはずです。結果はさておき、私も会社員だった頃は、そうしようと努めてきました。

 

介護は「諦めなければならないこと」が多々起こる


――なるほど。確かに仕事はそれが当然ではあります。

川内 しかし、人の老化は止められません。だから介護は「基本は撤退戦」です。仕事なら、以前よりも収益が伸びる、貢献が報われる、そういう期待があるから現場はモチベーションを維持できるわけですが、介護では、むしろ「諦めなければならないこと」が多々起こります。「成長」を目指す仕事のメソッドとは違う方法論が必要です。

――大半の仕事は攻勢ですから、前へ前へ、前年比で成長を、ですが、介護は領土をあけ渡しながらじりじり下がるイメージ、ってことですね。どちらかというと、リストラと似ている。

川内 そうですね。もしかすると、事業や会社の整理などを経験した方は、介護の考え方の理解が早いかもしれません。言われてみれば、僕はコンサル時代にリストラの仕事を経験しているんですよね。