街を見守るコルシカ島の猫と、尻尾だけ写っているポーランドの猫の話
——印象的な飼い主さんはいましたか?
新美:特に印象深いお2人がいます。1人目はコルシカ島のまどねこの飼い主さん。古い住宅の窓から2匹の猫が見てるんですけど、飼い主さんは野良猫を保護している40代の男性で、家の中にはこの子たちの他にまだ6匹いると言っていました。男性は街中の野良猫を保護したいけれど、猫に「うちに来るかい?」って聞いて「いいよ」と言った猫しか連れてこないようにしている、と話していたんですね。
——すごく優しい男性ですね。
新美:本当にね。ここからが興味深くて、「2匹が外を見ているのは、本当は外に出たいのかもしれないですね」と言ったら、男性は「違う」と。彼らは自身が野良出身だということを理解していて、外を見ているのは街の様子と、そこで暮らす野良猫たちのことを心配して窓から見守っているんだよ、という話をしてくれました。
——街の猫たちの安全を、この子たちが監視してくれているんですね。
新美:すごく素敵なお話でしょう? もう1人は、この尻尾しか見えていないポーランドの猫の飼い主さん。実はこれ、『猫のハローワーク』(講談社)にも登場する猫ちゃんなんです。今作では尻尾だけになってしまったんですけども(笑)。
ポーランドの人は、「猫の階段」を家の窓につけていることが多いんですよね。階段があったので、外から「猫ちゃんが降りるところを撮りたいんですけど」と呼びかけてみたら、この階段は夫が作ったもので、猫ちゃんもすごく喜んでくれてるのよ、と飼い主さんが話してくれました。その方は猫ちゃんを起こしてきて「この人が写真撮りたがってるから階段を使っておやりよ」って説得してくれたんですけど、猫は「嫌だな〜」という顔でしばらく考えた末に、「やっぱり行かない!」の瞬間の尻尾なんです。
——交渉決裂の瞬間だったんですね(笑)。そうやって見ると、この尻尾がいっそう味わい深いです。
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