『別れる決心』2023年2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー/配給:ハピネットファントム・スタジオ/© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

「愛している」という言葉を排除した、究極の大人の愛の物語――。カンヌ国際映画祭でパク・チャヌク監督が監督賞を受賞し、BTSのRMも繰り返し鑑賞した話題の映画『別れる決心』

山頂から男が転落死した事件を追ううちに、男の妻に特別な思いを抱き始める刑事ヘジュンを演じたのは、パク・ヘイルさんです。ポン・ジュノ監督作『殺人の追憶』では冷静沈着な容疑者、『グエムル-漢江の怪物-』 では元学生運動家のニートなど、一作ごとに異なる顔を見せる演技派。『別れる決心』では、繊細な刑事が容疑者との禁断の愛にはまって崩壊していく姿をストイックかつエロティックに演じ、さらなる新境地を開きました。パク・ヘイルさんが語る、「パク・チャヌク映画」の魅力、容疑者役のタン・ウェイの意外な素顔、そして大人の色気について。

 


パク・チャヌク監督は俳優やスタッフに、まるでカーナビのように正確なルートを伝え、安全に運転できるようにしてくれます


――愛情を体や言葉で直接表現しないにも関わらず、エロスとパク・ヘイルさんの色気があふれる作品でした。

今まで俳優として生きてきて、"セクシーな"という形容詞は私には似合わない単語だと思ってきました。この作品でそのような部分を感じていただけたなら、それはパク・チャヌク監督と脚本家のチョン・ソギョンさん、そして撮影、照明、美術、扮装、衣装など各分野の芸術家たちの苦労のおかげだと言えます。ヘジュンというキャラクターは、本当にたくさん人々の助けがあって出来上がったキャラクターですから。そして、セクシーに見てくださってありがとうございます。

カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに登場したパク・ヘイルさん 『別れる決心』2023年2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー/配給:ハピネットファントム・スタジオ/© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

パク・ヘイル
1977年1月26日、ソウル市出身。本作で初めて刑事役に挑戦している。児童劇団員から演技キャリアをスタートさせ、2000年に舞台「青春礼賛」でデビュー。『ワイキキ・ブラザーズ』(01)で映画初出演。2003年『嫉妬は私の力』で高い評価を受けて、韓国映画評論家協会賞をはじめ各賞で新人賞を受賞し、映画界注目の若手として急浮上。同年ポン・ジュノ監督作『殺人の追憶』で広く知られる存在となった。06年に再びポン監督と組んだ『グエムル-漢江の怪物-』が1,301万人を動員する大ヒット。『神弓 -KAMIYUMI-』(11)で青龍映画賞、大鐘賞にて主演男優賞に輝くなど、演技派俳優として数々の映画で重要なポジションを担っている。主な映画出演作に、『22年目の記憶』(14)、『ラスト・プリンセス -大韓帝国最後の皇女-』(16)、『天命の城』(17)、『王の願い ハングルの始まり』(19)など。

――パク・チャヌク監督は、韓国でのインタビューで「なぜパク・ヘイルさんを主演に?」と尋ねられ、「普段からいろいろな場でパク・ヘイルさんに偶然会う機会があって、落ち着いていて慎重なところが良いと思っていた。『別れる決心』のシナリオを書くときも初めからパク・ヘイルさんをイメージしていた」と話しています。最初に監督からオファーを受けたときはどんな感じでしたか。

私がパク・チャヌク監督にお会いした初めての記憶は、私のデビュー作『ワイキキ・ブラザーズ』を撮っていたころのことでした。パク監督はソン・ガンホ先輩と『JSA』を撮っていた時期でしたが、飲み屋で偶然会って、ソン・ガンホ先輩は同じ俳優だったので、挨拶したのを覚えています。『オールド・ボーイ』などで韓国映画を代表する監督になられて、撮影を終えるたびに打ち上げパーティーのような場所で軽く挨拶をしていました。

パク・チャヌク監督とお仕事できるとは、私のような俳優に役をくださるとは、想像していませんでした。私のような性質の俳優がパク・チャヌク監督の作品に溶け込むことができるのか? と思っていたんです。そんななか、突然監督から電話が来たんです。監督から電話がくるとは全く思っていなかったので、思わず「私がなにかやらかしたのでしょうか?」と(笑)。

「ある作品にキャスティングしたいけど、まだ脚本を渡せる状態ではない」と。そしてカフェで1時間かけてこの作品とヘジュンについて説明してくれました。話を聞きながら、まずパク・チャヌク映画というジャンルに好奇心を抱きました。ふたつめは、男性の俳優であれば誰でも一度は刑事をやってみたいと思うものですが、私はまだ演じた経験がありませんでした。パク・チャヌク監督が描こうとする刑事の姿が斬新に思えたんです。ご覧になったように。そんなところに魅力を感じました。さらに、タン・ウェイさんがキャスティングされたと聞いて、決めました(笑)。

『別れる決心』2023年2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー/配給:ハピネットファントム・スタジオ/© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

――監督の演出方法やストーリーの構築方法など、実際に一緒に仕事をしたからこそ気づいた他の監督とは異なる「パク・チャヌク映画」の魅力とは。

私は、良い監督たちは俳優の話を細やかに聞いてくれると思っています。そして、俳優たちの性格を作品にうまく生かしてくれます。パク・チャヌク監督は本作に登場する、親切なヘジュン刑事のようです。同時に、絵コンテを完璧に準備して撮影する監督でもあります。俳優やスタッフに、まるでカーナビのように正確なルートを伝え、安全に運転できるようにしてくれます。そうした部分が監督の長所です。