相手の気持ちを受け止めたというメッセージになる「オウム返し」

主語を「あなた」から「私」にするだけで上から目線感がなくなる! ハイブランドの元販売員がVIPに学んだ言葉の使い方_img0
写真:Shutterstock

ある日の店内でのことです。色とりどりの財布が並ぶショーケースを、熱心にのぞき込むお客様がいらっしゃいました。私は、ゆっくりと近づき、「気になるものがございましたら、お出しいたします。お手に取ってご覧くださいませ」と声を掛けました。

 

お客様は、「このブルーの、見せてください」とおっしゃいました。
その財布は、「セルリアンブルー」という鮮やかな色で、ショーケースの中でも一番目立ち、南国の海の色のようにキラキラと輝いていました。

私も、この色が気になっていたので、思わず、「はい、このセルリアンブルーですね」と答えてしまったのです。

お客様の輝いていた顔は、少し曇ったように見えましたが続けて、「セルリアンブルーっていうのね。勉強になるわ」と微笑みました。

お客様には、「これはブルーではありません」と、否定的に聞こえてしまったのです。

「はい。このブルーですね」と、お客様の言葉を復唱し、色のことについて訊かれたら、「セルリアンブルーという色のようで鮮やかですね」などとお答えすればよかったと反省しました。

「オウム返し」というコミュニケーションスキルがあります。相手が言った、そのままの言葉をオウムのように返すというものです。相手から出てきた言葉を、そのままオウムのように返すことは、「あなたの言葉を、ちゃんと受け止めていますよ」というメッセージになるのだと思います。

私というフィルターを通して、相手の言葉を変換してしまうと、「ちょっと違う」「この人は、私の気持ちがわからない」と、そこでシャッターを下ろされてしまう恐れがあります。

返す言葉で上から目線と感じさせてしまったり、相手の気持ちを勝手に縮小したり拡大したりしてしまうこともあります。

オウム返しは、「あなたの気持ちを受け止めました」という受容のスキルであり、基本のコミュニケーションマナーです。