家康ってこんな人だったの? 今年のNHK大河ドラマ『どうする家康』を見て、松本潤さん演じる徳川家康のイメージが変わった人も多いのでは。大河ドラマをきっかけに、家康のことをもっと知りたい方へおすすめなのが、歴史学者・磯田道史さんの『徳川家康 弱者の戦略』。「家康の後ろ姿から、今を生きる人々が何かを得られたら」という思いで書かれた本書から、”弱者”家康から学べることと、織田信長・豊臣秀吉とのスタンスの違いをご紹介します。これを読めば『どうする家康』がよりおもしろくなること間違いなしです。
以下は、磯田道史さんの『徳川家康 弱者の戦略』からの抜粋です。


周囲を味方にする外交力と、敵からでも積極的に学ぶ姿勢

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いまの私たちが家康の人生から何を受け取ることができるのか。それは危機から学ぶということでしょう。地球儀のうえの日本をみれば一目瞭然ですが、日本もまた三つの大国、アメリカ、中国、ロシアに囲まれた小国です。蒸気船が現れてからは、三河と同じく、地政学的に非常に厳しい環境にさらされてきました。

三大国に囲まれて、いかに生きるか。そこで最も大事なのは、三つのうち、最低一つ、できれば二つを味方にして敵に回さない、ということです。小国が三つの大国をすべて敵に回したら、滅ぶほかありません。

 

また家康に学ぶべき小国の知恵は、よいと思ったものは敵からでも積極的に学ぶことでしょう。

信長は、筋目を問わず、豊臣秀吉でも明智光秀でも、能力だけをみて、躊躇なく抜擢しました。代々の家臣を持たない秀吉は、無類の人材好みで、他家の家臣でも次々と声をかけています。

それに対し、家康は苦楽を共にした三河家臣団との結びつきが強いイメージですが、そうばかりでもありません。自軍のアイデンティティというべき主力部隊のコンセプトを、敵であった武田からためらうことなく取り入れています。

孤立主義を避ける対外感覚と、外から積極的に柔軟に学ぶこと。これこそが、三大国の狭間に生きる私たちが、自分たちを磨き上げ、進化を遂げられるかどうかのカギを握っているのではないでしょうか。