久しぶりに、ちょっと心がダウンした。

もうすべて終わったことだし、今はすっかり心身ともに回復したから書くけど、原因は編集者とのトラブルだった。簡単にまとめると、要は勝手に原稿を書き換えられたのである(念のため申し添えておきますが、もちろんミモレ編集部じゃないよ)。

編集者とさんざん話をした。ライターの書く原稿は、編集者のドラフトではないとはっきり伝えた。それでも、僕が何に対して怒っているのか相手にはわかってもらえなかった。最後はもうこれ以上何かを話すことさえも億劫で、何も反論せず、相手の言い分をそのままそっくり受け入れ、コピペのような返事をただ送るだけのマシンになって、やりとりを終えた。

 


異変に気づいたのは、次の日の朝だった。ベッドから起き上がれない。いきなり重力が倍になったみたいに、体がベッドに貼りついている。頭はちゃんと目覚めているのに、体がそれを拒否している。なんだか内臓をすっかり鉛に変えられたみたいだった。

這いずるようにしてベッドを出て、パソコンを立ち上げてはみたものの、指がまったく動かない。真っ白なWordの上に文字の破片がミミズみたいにウニョウニョして、まるで像を結んでいかない。脇腹のあたりにモーターがついていて、なんとかそれを回転させようとするんだけど、モーターには棘がびっしりついていて、空転するたびに胃の粘膜が削られているような痛みが走る。

5分とパソコンの前に座っていられなくて、また横になる。その繰り返しを、午前中の間、続けて思った。ああ、これは自分がダメになってしまったんだなと。

働いていると、時折こういうことがある。いい加減、自分の不具合に自分でも慣れているので、僕はこたつで丸まりながら、これからやるべきことを冷静に判断する。

まずどうしても締め切りが延ばせないものに関しては、大作家じゃないんだから書けないとか言ってないで意地でも書く。こういうときは心にアニマル浜口を宿らせるのが一番である。YouTubeにアップされているアニマル浜口の「気合いだ」10連発を聞いて、なんとか急場を凌ぎ切った。

逆に、締め切りが厳密でないものに関しては、編集部に連絡して、納期を遅らせてもらった。ありがたいことにみなさん快く承諾してくださって、世界は愛でできていると、こんなときだけ赤い羽根募金みたいなことをのたまってみたりする。そうやって、山積みのタスクを、ジェンガみたいに慎重に抜いてはまた上に積み直し、業務バランスを調整する。そして、体調の回復に向けて、何をすべきか考える。

幸い3週間後には、友人に会いに広島に行く計画を立てていた。ならば、この前後で休みをとって、療養にあてるのがベストだろう。Googleカレンダーを数日間まるまる「休み」と塗りつぶす。それだけで、ほんの少し気持ちが軽くなる。