「女性の働きやすい環境づくり」の実現を目指すべく、女性の健康や就労課題の実態調査を行っている産学医のプロジェクト「まるのうち保健室」をご存知でしょうか? 三菱地所、ファムメディコ、神奈川県立保健福祉大学が連携し、東京・丸の内を中心に街一体となった啓発イベントも積極的に開催しています。
そんな「まるのうち保健室」が、このたび疫学調査を基にした「働く女性 健康スコア」のトライアル版を発表。企業14社の協力のもと、3425名の働く女性にアンケートを実施すると、意外な結果が見えてきました。今回は、3月8日のオンライン発表会で語られた識者の分析とともに、気になる「働く女性 健康スコア」の内容を一部ご紹介したいと思います。
PMSに更年期……「男性社員の理解」が症状を緩和?!
今回の調査に協力した3425名のうち、年代別の割合は〜20代・25%、30代・29%、40代・25%、50代〜・21%。幅広い年齢層のデータが集まっています。かねてより働く女性を悩ませている女性特有の健康課題については、次のような調査結果が出ています。
この結果を受けて、調査を実施した神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションセンター教授の吉田穂波さんは、「働く女性の多くが女性特有の症状に悩まされている。むしろこういった症状が“あって当たり前”という実情が可視化された」とコメント。一方で、症状を自覚している人が多いにもかかわらず、理解または対処できている割合が少ないことも指摘します。
しかしながら、この調査でもっとも興味深かったのはここから先。さまざまな回答を分析したところ、
・男性社員が女性特有の症状に理解がある
・上司・同僚が頼りになる
・職場の雰囲気が友好的
と感じている女性ほど、「月経困難症やPMS、そして更年期の症状そのものが緩和する」という驚くべき結果が出たといいます。特に更年期症状に関しては具体的な例として、「息切れ・動悸」「怒りやすくイライラする」「くよくよしたり、憂鬱になる」「疲れやすい」といった症状が軽減されることが調査結果からわかったそうです。
産婦人科医でもある前出の吉田穂波さんは、日頃から女性たちに向けて医療的ケアを行なっていますが、この結果について「周囲のサポート、職場の雰囲気そのものが“社会的処方箋”になっており、症状の緩和やストレスの減少につながっているのではないか」と考えを述べました。
女性特有の症状による経済損失は…なんと約5000億円!
なお、女性特有の月経随伴症状(月経痛・貧血・イライラなど)による経済損失額は、約4911億円(※)。治療費などを含めると、月経随伴症状による社会的経済負担額は約7000億円(※)ともいわれています。
※出所:同レポート掲載、平成31年3月「経済産業省 ヘルスケア産業課 健康経営における女性の健康の取り組みについて」より
女性特有の症状緩和には「周囲のサポート」が大きな役割を担っているという分析を受け、日本における不妊治療の第一人者で、慶應義塾大学 医学部名誉教授の吉村泰典さんは、「ただし、男性社員の理解は企業によって大きな差があるのが現状だ」とデータを指摘。
女性特有の症状に対して今回の調査結果を活かすためにも、次のように提案します。
「企業や社会が女性の健康サポートすることは、コストではなく人的資本への投資である。女性が健康で明るくすごし、活躍することは社会にとって不可欠だ。女性の健康サポートについて企業側は、労働生産性を高めるための“経営戦略”の一つとして認識する必要があると感じている」
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