閉経を境に急激に減少する女性ホルモン。

首から上の滝汗、コントロールできないイライラ&気分の落ち込み、血圧の上昇、骨の老化。さらにはぽっこりお腹や肌のトラブルなど見た目への影響まで……。女性ホルモンの乱降下により、人によっては更年期症状と呼ばれるさまざまな不調が心身に及んできます。

「これは女性にとって避けられないことだから……」と、あきらめるばかりではいけません。足りなくなった女性ホルモンは、医学の力でチャージすることができる時代です!

「閉経により女性ホルモンが減ることは予めわかっているので、いかに備えをしておくかが大切。更年期の不調を攻略するポイントは、女性ホルモンの変化を自分でマネジメントできるかにかかっています。

若い時から食生活、運動、食事を意識して心身を健やかに保つことも更年期症状の予防として有効です。また、もしすでにつらい更年期症状を抱えているなら、女性ホルモンの減少の穴埋めをするという方法があります。その手段は3つ、ホルモン補充療法(HRT)・漢方・サプリメントです」

そう話してくれたのは婦人科医の吉形玲美先生。吉形先生は、40代から積極的に「閉経マネジメント」を行うことを推奨しています。「閉経マネジメント」は吉形先生がつくった造語で、「閉経による女性ホルモンの急減によって、女性の心身に起こる変化について知識を持ち、前もって備えられることは備え、主体的に自分の健康をマネジメントする」という考え方。

今回は、更年期をラクに過ごすための主体的マネジメントである、ホルモン補充療法、漢方、サプリメントの活用法についてお聞きしました。

 

女性ホルモン欠乏を薬で補うホルモン補充療法(HRT)で更年期症状はどう変わる?


ホルモン補充療法(HRT)とは、閉経前後から減少を始める女性ホルモンの代わりに、それと同じ働きをする薬により補うことで更年期症状を改善する治療法です。

出典:『40代から始めよう!閉経マネジメント』より

「女性ホルモンのエストロゲンは、上の図のように40歳を過ぎたころから分泌量がゆらぎながら少しずつ減少し、閉経前後に急降下のカーブを描きます。このホルモンのゆらぎや急激な減少に心身がついていかず更年期症状を抱える方がいますが、ホルモン補充療法をすることで女性ホルモンのゆらぎや減少のカーブをなだらかにすることができ、不調の改善につながります」

女性ホルモンの減少を医学の力で根本的に調整するホルモン補充療法。具体的にどのような治療なのか、気になることを吉形先生に伺いました。

①いつから使えますか?

「閉経して数年以内のタイミングで使われる方が多いですが、更年期症状が出てきてつらいという方は閉経前のゆらぎの時期から始めることもできます。年齢の目安としては40代後半以降になります。婦人科医と相談しながらご自分に合ったタイミングでスタートしてください」

②治療の始め方は?

「ホルモン補充療法を始める前にはいくつかの検査が必要です。不調をすでに抱えている場合、それが女性ホルモン低下による更年期症状なのか別の原因なのか確認する必要があります。月経状況の確認、卵巣機能の検査、血液検査でホルモンの数値を見て、すでに閉経している、またはゆらぎ期にあるのかを見ていきます」

③どういう薬なのでしょうか?

「飲み薬または貼り薬やジェルなどです」

④保険はつかえますか?

「副作用チェックなど一部保険適用外の検査がありますが、薬はすべて保険適用内です」

⑤副作用はありますか?

「女性ホルモンを補充するので、胸が張ったり、おりものが復活したり、若干のむくみや体重の増加、ときには不正出血がある場合がありますが、薬が続けられないほどではありません。乳がんのリスクを心配される方がいますが、天然型の黄体ホルモン剤を選択したり、使用期間が5年以内であれば乳がんのリスクは上昇しないことがわかっていますので、安心してください」

⑥ホルモン補充療法は卒業できますか?

「みんな卒業できます! 閉経前後の不調は、女性ホルモンの分泌量がゆらいでアップダウンしたり、急激な減少で身体がパニックになっている状態。ホルモンの変化に体や頭がいずれ慣れてくるので卒業できます」

取り入れることで、更年期症状の改善につながるだけでなく、骨密度の低下を防いだり、皮膚コラーゲンや保湿力の増加で肌の調子もよくなったりと、なんだかいいことづくめに思えるホルモン補充療法。

しかし、過去に乳がんを患っていた方や心筋梗塞、脳卒中になった方など、既往歴によっては再発リスクがあるため受けることはできません。