ジェーン・スーさんの新刊『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』を読んで、20代の頃に編集部の先輩から言われた言葉を思い出しました。

「あなたが綱渡りしているのを見て笑う人間がいるかもしれないけど、気にしないで」

当時私は、隔週刊だった「FRaU」の編集部にいて、本当に休みなく働いていました。朝まで編集部にいることも少なくなかったし、編集部のソファで寝落ちしてしまうことも度々ありました。それでも、新しい仕事にどんどん挑戦させてもらえるのが楽しかった。前例のない企画も多くて、いろんなことが同時進行で、いつも校了ギリギリ。手足が絡まりそうになりながらも、編集の仕事にのめり込んでいました。

今思うとゾッとしますが、粗くて危なっかしい仕事ぶりだったと思います。「そこまでやらなくても」とか「やめたほうがいいんじゃない」と言われてもおかしくなかった状況だったと思いますが、先輩はそんな私の「綱渡り」を応援してくれたんですね。とても嬉しかったし、今でも時々その言葉を思い出します。

ジェーン・スーさんの新刊『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』 は、「週刊文春WOMAN」の連載インタビューを書籍化したものです。

齋藤薫さん、柴田理恵さん、君島十和子さん、大草直子さん、吉田羊さん、野木亜紀子さん、浜内千波さん、辻希美さん、田中みな実さん、山瀬まみさん、神崎恵さん、北斗晶さん、一条ゆかりさん。13人の女性が紆余曲折を経て自分の道を拓き、自分の居場所を確立し、唯一無二の存在になるまでの格闘の日々が綴られています。

 

「元々あった椅子に請われたので座りました」みたいな方は一人もいなくて、誰もやっていないことをやりながら、挫折したり、ときにバッシングを受けたりしながら、自分の居場所を獲得してきた女性たちの話。まさに「闘いの庭」です。

面白いのは、聞き手のジェーン・スーさんもまた闘っているなと思うところ。本を読んで最初に「これは試合だな」と思いました。攻撃したり倒したりする意味合いじゃなくて、話す方も聞く方も真剣勝負だという意味です。ちょうど大草直子さんの回が掲載されたとき、大草直子さんのエッセイ『飽きる勇気』が出たばかりで、私は本の担当編集として、この対談記事を読んで軽い衝撃を受けたのを覚えています。なぜなら、本のために何時間も大草さんの話を聞いたのに、ジェーン・スーさんのインタビューには初めて聞く話が綴られていたから。どれだけ準備して、覚悟を持って対峙したんだろうと思ったのを覚えています。

女性の成功譚みたいなものが少ない、あっても私たちが読んできたのはナイチンゲールやマザー・テレサのような愛を持って他者に献身する「ケア労働」なことが多くなかったか。ということは前書きにも書かれていて、ご本人もインスタライブで語っていました。

 

女性がーー女性に限らずかもしれませんが、誰かが新しい道を切り拓いて活躍しようとすると、バッシングされたり、「それは如何なものか」とか「やりすぎ」「頑張りすぎ」と揶揄されることはよくありますよね。

インタビューされた13人の方は、そんかなか諦めずにやり切って、居場所を築いた方なんだと思います。今すでにあるものじゃないものに向かってチャレンジしている人に対して、揶揄したりせずに「いいじゃないですか! 応援してます!」と言える世界にしないとですね。


それともうひとつ。「地図」と「羅針盤」があれば、信じ続け、あきらめないことが叶う。自分を見失うこともない。でも「地図」と「羅針盤」を手に入れる前に歩みを進めた結果、選択の基準がわからずに音を上げてしまう人をたくさん見てきたーー。スーさんは「あとがき」にそう書いていました。おお! 今度お会いしたら、道半ばで撃沈しないようにするにはどうしたら良いかについて、がっつり聞きたいなあ。

とにかく、ジェーン・スーさんのこの本に込めた気概というか気合いを、しかと受け止めました。はー面白かった。皆さんも良ければぜひ!

 

 

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