こうしたことから、今回のこども家庭庁については、厚生労働省が担当していた業務と内閣府が担当していた業務の多くが移管されましたが、幼稚園などの教育行政については、引き続き文部科学省が担当する形となりました。これ以外にも、他の府省において子ども関する業務を行うところがあり、すべてをこども家庭庁が統括するのは現実的に難しいという問題があります。
このため、こども家庭庁には、他省庁に改善を求める「勧告権」が付与されており、子ども関する政策で複数の省庁がうまく連携できない場合、こども家庭庁から勧告を行うことで、業務の連携を図ることが期待されています。
基本的に役所というのは、他の役所から干渉されることを嫌う組織ですから、こども家庭庁がうまく機能するためには、同庁が持っている勧告権をいかに適切に行使できるかにかかっています。
もう一つの課題はやはり、政策の中身と予算でしょう。
岸田首相は「予算倍増」という発言は行っていますが、いつの時点におけるどの予算をいくらまで増やすのかという具体的な数値には触れていません。また、どのような政策にいくらのお金を使うのかという詳細な計画も見えておらず、財源についても十分な議論が行われているとは言えない状況です。
与党内の一部からは、財源として社会保険の保険料増額というプランが出ているようですが、国民からの反対の声もあり、調整が行われています。いずれにしても、何をするのかが決まらなければ予算の数字も出せませんから、この部分が最も重要な課題といってよいでしょう。
6月までには政策の大枠が示される見込みと言われており、具体的な議論はそこからになります。したがって、実際に政策が動き出すのは来年以降ということになりそうです。
勧告権の行使にせよ予算の獲得にせよ、最終的に実行力を担保するのは政治力ですから、この組織を活かすも殺すもすべて首相のリーダーシップにかかっていると言っても過言ではありません。
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