外国人技能実習制度を利用し、新潟県のニット工場で働くベトナム人実習生。(写真は2019年当時)写真:ロイター/アフロ

諸外国から非人道的と批判され、日本の低賃金の温床にもなっていた技能実習制度がようやく廃止されることになりそうです。事業がスタートしてから約30年が経過し、遅きに失したとの声もありますが、少なくとも制度の見直しに向けて動き出したことは評価してよいでしょう。

政府の有識者会議は2023年4月10日、事実上の外国人労働者の受け入れ策である技能実習制度の廃止と新制度への移行を求める提言(試案)をまとめました。

 

技能実習制度は1993年にスタートしたもので、90種類近くの職種で外国人を実質的に雇用できる制度です。日本の技術を外国人に継承するというのが建前ですが、現実には外国人労働者を安価な賃金で雇用する仕組みに他ならず、人手不足の安易な解決策として機能してきました。

自由市場において企業が外国人を雇用し、結果的に賃金が低かったということであれば、国際問題にまでは発展しませんが、この制度の場合、政府が主体となって外国人を国内に呼び込み、一部の事業者は実習生に対して賃金の未払いや、劣悪な環境で身柄を拘束するなどの違法行為を行っていました。また、転職ができず、1つの仕事に強制的に縛り付けるという基本的人権をないがしろにするルールとなっていました。先進諸外国から見れば奴隷労働に該当するものであり、人権保護の観点から批判されることはほぼ確実だったといってよいでしょう。

最大の問題は、日本国内と海外の認識の差があまりにも大きかったことです。

当然のことですが、この制度に対しては発足当初から人権上問題があると指摘されており、人手不足は自動化やIT化などで対応すべきという意見も出ていました。しかし、国内では「人手不足なのだからやむを得ない」「賃金を払っているのに何が問題なのか」「ITでは問題解決できない」といった声が大きく、結果的に30年間も継続させることになってしまったのです。

日本国内での人権や労働に対する認識があまりにも海外と乖離しており、自ら制度の見直しを行う動きにつながらなかったわけですが、こうした内外における認識の違いは、多くの分野で日本の国益を損ねています。

 
  • 1
  • 2