「日本で大谷翔平選手のプレーが見られるなんて!」と日本中を熱狂させた、2023年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。米国メジャーリーグで投手、打者として活躍するロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手のプレーを一目見ようと、ふだん野球に縁のない人々までメディアにくぎ付けになりました。

大谷選手が球場の外でも人々を魅了する秘密とは? 今回は、大谷選手の「スーツの着こなし」に注目! 大谷選手のファッションの見どころを、ファッション評論家の石原裕子さんに教えていただきました!

 

大谷選手は「“鍛え抜かれた胸”でスーツを着る」
コンパクトなパンツで好バランスに


――ユニフォーム姿の大谷翔平選手はもちろんですが、オフタイムのファッションが魅力的です。とりわけスーツが似合います。

(左)2021年11月15日、日本プレスセンターで行われた帰国会見にて。写真/東京スポーツ/アフロ (右)2022年10月18日、米国から帰国し、会見場に登場するエンゼルス大谷翔平選手。日刊スポーツ/アフロ

石原裕子さん:大谷選手は、2020年の春からHUGO BOSS(ヒューゴ・ボス)のアンバサダーをしています。ヒューゴ・ボスはドイツの高級ファッションブランドで、大きい体格の男性のデザインを得意としています。大谷選手も大柄ですよね。


――身長193センチメートル、体重が約95キログラム。日本人離れした体格ですね。パンツ丈が短くてクールです。

2021年11月15日、日本プレスセンターで行われた帰国会見にて。シンプルなスーツの中にも「大谷翔平らしい」ポイントが。写真/東京スポーツ/アフロ

石原さん:スーツの上からでも、鍛え抜かれた上半身がわかります。一般的に「スーツは肩で着る」と言いますが、大谷選手は「胸の筋肉でスーツを着る」タイプ。パンツは裾に行くにしたがって細くなり、短めです。上半身が大きい場合、ボトムスをコンパクトにした方がバランスがいいんですよ。野球選手らしくお尻が後ろにグッと張り出していますから、サイドベンツがお似合い。上手に着こなしていますよね。


――上半身のサイズが下半身より2サイズも大きいといいますね。

石原さん:大谷選手は、映画『スーパーマン』のクラーク・ケント役のクリストファー・リーヴを彷彿とさせます。頭が小さくてベビーフェイスなのに、上半身はマッスルタイプ。スーパーマンのように、胸を張って両腕をグーッと伸ばして空を飛んでいくような……。二人を並べて見てみたいです。

1978年「スーパーマン」を演じたクリストファー・リーヴ。髪型も似てるかも? 写真/Everett Collection/アフロ


――スーツ選びはいかがですか。

石原さん:小さめの襟、白いシャツ、紐靴。細いストライプのネクタイ。ほんとうにノーマルなスーツがお好きですね。でも、そこが彼のいいところなんです。シンプルなスーツを、鍛え抜かれた体でファッショナブルに着こなしてしまうのです。
 

大きいスニーカーにスーツを合わせたアメリカンな着こなし

2022年10月18日、米国から帰国し、会見場に登場するエンゼルス大谷翔平選手。スポーティなスーツスタイルです。写真/日刊スポーツ/アフロ


――こちらのスーツもシンプルですね。

石原さん:カジュアルなスーツに白いTシャツ、白いスニーカー。短い丈のパンツに大きいスニーカーを合わせていますね。


――足首が見えるほど短いパンツなのに、なぜかとっても彼らしい印象を与えます。一般の人が大谷選手のような着こなしをするとしたら、どこを意識すればいいでしょう?

石原さん:ジャケットを少し短めに着て、パンツは先を細めに。それから、スニーカーにスーツを合わせる、という発想もよさそうです。スニーカーで通勤して、会社に着いたら革靴に履き替える。そんなアメリカンな着こなしもいいですね。
    

――大谷選手の魅力とは?

石原さん:体は男っぽいのに、顔は童顔でなんともキュート。香水よりも石鹸の香りがしそう。清潔で健康的な印象が大谷選手のよさですね。ファッションもオーソドックスだからこそいい。そんなこだわりのないところに、彼の魅力を感じますね。
 


石原裕子(いしはら・ゆうこ)
ファッション評論家。長年に渡りパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのプレタポルテコレクションを取材し、世界のファッション業界事情に精通している。即位関連の一連の儀式の間、メディアで雅子さまの装いを分かりやすく解説。現在、テレビ・雑誌・講演などで活躍中。「ファッションチェック」という言葉の発案者でもある。

 

聞き手/高木香織
構成/熊木彩乃