いよいよマスク使用のルールも緩和され、人との集まりや食事会、結婚式などのフォーマルなシーンが戻りつつあります。
とはいえ、久しぶりの本気のおしゃれ。
一体何を、どう着ればいいのか迷ってしまうという人も多いはず。
そこでスタイリスト佐藤佳菜子さんに、大人にふさわしい“今どきの華やかさ”について教えてもらいました。
 

合わせ次第で
“どうにでもアレンジできる服”で
自分らしいドレスアップを


「おしゃれのT.P.Oは積極的に楽しむ方なので、例えばレストランでのディナーやライブ鑑賞、あるいは特別なドレスアップが求められる結婚式やイベントなどには、それなりのきちんとしたおしゃれで臨みます。ですが、皆さんが想像するような華やかさとは少し違うかも……。ドレスアップだからといってやたらと盛っていこうとか、これを機に普段着られない服を着て別キャラクターになってやろうとか、そんな一過性の爆上がりテンションを服に求める気持ちは一切ありません(笑)。
 ドレスアップでも旅行でもそうなんですが、“そのとき、その目的でしか着られない服”というのは必要ないと思っていて。それよりはジュエリーや小物、合わせ次第で“どうにでもアレンジできる服”の方がよっぽど価値があると思っています。だから私のドレスアップは意外と地味。でもそのくらいのテンションが、大人の華やかさにはちょうどいいし、自分らしくリラクシーな気分で過ごせるかなと思うのです」
 

 Pattern1 
華やかさの表現に肌見せは有効。
得意なところだけを出す
“ポジティブ露出”で!

 
ワンピース/カレンソロジー バッグ/J&M デヴィッドソン 靴/セルジオ・ロッシ ネックレス/アフェクト ピアス/エナソルーナ 中指の太いリング/ソフィー ブハイ バングル/ダミアーニ(すべて佐藤さん私物)

「夜のお出かけやホテルでの食事など特別感のあるおしゃれをしたいときに選ぶのは、いつもより少しだけ肌見せの分量を増やす、というやり方。もちろん、服そのもののデザインでドレスアップを演出することもありますが、ミニマムなドレスでほんの少しだけ露出を増やすのは、大人が “非日常の華やかさ”を表現するのにとても効果的だと思います。
 この“露出”という問題。難しいと思っている大人が多いはず。だって、年齢を重ねれば、どうしても気になるパーツが増えていく。もちろん私にもあります。
 でもよく考えてみると、すごく気に食わないパーツがある一方で、まあまあ気に入っている、もしくは他と比べればまあ悪くない、というパーツもあるはずです。これは決して、他人と比較したきれいさを言っているわけではありません。あくまでも“当社比”!! 単に自分の中では悪くない、他と比べればマシといったレベルでいいのです。
 例えば私の場合、肩や背中、ヒップには肉が付きにくい。でも胴体は比較的丸く、ウエストのくびれはあまりありません。そんな風に、人には骨格的なクセみたいなものがあって、必ずその人にとってのいいところがあります。脚の長さを気にしている人は上半身やウエストがほっそりしている人が多いし、ウエストと腰ががっちりしていてもひざ下はすらっとしているかもしれない。スタイル抜群のモデルさんでさえ、それぞれのお悩みがあるのと同じこと! 大人の露出とはつまり、やたらめったら肌を出すのではなく、得意なところだけを出して苦手なところはきちんと隠す、これに徹すればいいのです。

ということで私は、“得意なパーツ”である肩から背中が大きく開いたドレスを選んで、華やかさを表現することが多いです。肩から背中くらいなら、周りのみなさんの心を無駄にざわつかせてしまうこともないし、ある程度思い切って肌を出すことで、たとえば結婚式やパーティなど人が集まるような場所ではおしゃれの差別化を図ることもできます。だって婦人たちはどちらかというと、どんどん覆い隠していく方向のおしゃれの人が多いから。
 この、得意なところだけを出していく“ポジティブ露出”。年齢を重ねた今こそ、特別なおしゃれのシーンでぜひトライしてほしいと思います」

 

“得意なパーツ”だけ露出するドレス、
他にはこれを愛用!

〈右から〉ドレス/マメ クロゴウチ ドレス/カオス(2点共佐藤さん私物)

「肩と背中が大きく開き、身頃はすっきり細めのタイトシルエット。これが私の得意なパーツだけを露出し、体型をきれいに見せてくれるベストデザイン。自分の体型に合った肌見せドレスがあれば、ジュエリーや小物でやたらに盛り上げる必要もなく、おしゃれがグッと簡単になります」
 

 Pattern2 
もう少しだけ
“地味なドレスアップ”が必要なら
色や柄ではなくフォルムで魅せる


「例えば地元での同窓会や、親戚の結婚式など、先ほどのような大人の肌見せだと少しギョッとされてしまうような集まり。とはいえ、私はスタイリストという職業ですし、急になんでもない地味な服というのは、自分も周りも納得できませんし(笑)。って、これはちょっと特殊すぎる例かもしれませんが、つまり先ほどのコーディネートよりは少し控えめなドレスアップが必要なときに選ぶのがこんなトップス。突飛な色や柄、大きな開きなどではなく、フォルムでモード感やおしゃれ心を表現してくれるデザインです。
上品ですがそれなりにクセのあるトップスなので、色はシックでちょうどいい。全身で見たときに、この“大げさな形”だけで十分な華やかさと特別感がありますから。合わせたパンツもシンプルなもので、あくまでも出力は抑えめ。その方がかえって、このトップスの魅力が際立つと思っています。
とはいえ、真面目すぎるのもちょっと落ち着かないし、少しマダムになってしまいすぎるので、ゾウさんのバッグとモードっぽいシルバーの靴で、少しだけ“ふざけん坊”な心を覗かせてみました」

トップス/ドゥロワー パンツ/アンクレイヴ ピアス/エナソルーナ バッグ/ロエベ 靴/ジル・サンダー(すべて佐藤さん私物)

撮影/長谷川怜実(S-14)
ヘア&メイク/桑野泰成(ilumini.)
スタイリング・出演/佐藤佳菜子
構成・文/発田美穂