ジャニーズの性加害問題で感じた「人権教育」の必要性
――みんなの“思いやり”で人権が守られる、といった感覚が根強い日本は、そもそも「一人ひとりに人権があるんですよ」という教育はちゃんとされていないのかもしれません。
藤田 日本は「みんなで優しくしませんか」っていう“啓発”で終わっているんです。元々私たちにはこういう権利があり、それらを侵害されるのが「人権侵害」だよと教える「教育」が必要だと思うんですよね。
基本的人権を教える教育が必要だというのは、ジャニーズの性加害問題でも感じました。先日、イギリスのBBCで報道されて、私もそのドキュメンタリーを見たんです。ジャニー喜多川氏から性的加害を受けたという人にインタビューするのですが、被害者がジャニー喜多川氏のことを「今でも大好きですよ」と言ったりして、取材したジャーナリストが酷く困惑するんです。これはものすごい人権侵害だし、犯罪なのに、どうしてそれがわかんないんだ? って。もちろん複雑な問題ではあるんだけど、被害者自身が、深刻な人権侵害の問題を「問題として認識してない」から、インタビュアーと話がかみ合わないわけです。
そして最後にジャーナリストが言ったのは、子どもは守らなくてはならない、しかしこれについてだれも責任を問われず、問題の認識さえされてない。それこそが何よりも恥ずべきことだ、と。子どもは守られる存在であり、子どもにはこういう権利がある、ということが認識されていない。それは教えられてないからですよ。「守らなければいけないもの」という前提が、スコーンと抜け落ちている気がするんですよね。
――逆にいうと、イギリスだったり諸外国であれば、「あなたにはこういう権利がありますよ」ということは教育の中で教えられているんでしょうか。
藤田 先日、イギリス社会で移民や難民が受け入れられている現状について記事を書いたんです。そのとき、イギリスの小学校で教師をしていた私の友人とその話題について話したのですが、まずみんなが持っている権利にはこういうものがあるんだよ、と基本的な人権というものを学校で教えるそうです。普遍的な人権についてちゃんと教えていたら、外国人だろうが難民だろうが、同じように扱わないといけないとわかるはずなんです。
同じ人間なんだから助けるのは当然だよね、という考えがイギリスで普通になっているのは、基本的な人権とは何かを子どもの頃から教えているからだと思います。
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