●キラーフレーズ3:「考えておきます」
これは、もしかしたら、京都人の言い回しとしては一番有名なのかもしれません。
否定したり断ったりしたいときに、「いいえ」と言わずに真意を伝える方法として多用される表現です。
いきなり言下に断ってしまうと、その理由をはっきり述べてほしいと要求されてしまうリスクがあります。相手が理由を知りたくなるのも理解できないことではありませんが、とはいえこのとき、理由を明示してしまうと、関係が壊れてしまいかねない。そこで、表向きは賛意を示す態度をとって相手の気持ちをやわらげておき、実態としては行動に移さない、という形をとることで、関係は維持するけれど、依頼のほうは塩漬けにしておく、という状態をアクロバティックに実現してしまうのがこのやり方です。
●キラーフレーズ4:「しばらくお休みします」
「やめたい」とは言わずに、そっとフェードアウトするための言葉です。本当にしばらくお休みしたいときは「2、3カ月休みます」など、具体的な数字や時期を出します。
そういった具体性のある数字を出すことなく、あいまいな「しばらく」といったフレーズが京都人の口から出てきた場合には、もうこれは「永遠にお休みします」ということなのだな、と受け取り手は察しなければなりません。
とはいえ、形式的にではあってもあくまで「お休み」なのであって、「やめる」とは一言も言っていない、ということがとても大切です。
『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』
著者:中野信子 日経BP 1320円(税込)
職場、取引先、身内、ママ友、ご近所。イヤなことをされる、困っている、本当は言い返したい。だけど、この関係性は壊せない――。そんな時には、京都の人の「エレガントな毒の吐き方」がきっと役に立つ! 相手を直接傷つけたり、関係性を壊さないで言いたいことを言う方法をまとめた一冊。ケーススタディと学ぶ「言いにくいことをエレガントに伝える具体的な方法」や、「『困った』『イヤだ』を賢く伝える7+3のレッスン」、著者ならではの「科学の目で見る京都戦略」まで。京都出身のお笑い芸人・ブラックマヨネーズのすごさと、京都人の驚異の言語センスについても分析します。
構成/金澤英恵
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