「腹」の言葉が人を惹きつける
最後に、一番下の「腹」です。
惹きつける話し方の上で重要なポイントとなるここを私は「腹の意識」と呼んでいます。
腹に意識が向いているときはこのようなときです。
・やると決めたことや覚悟が決まったことを話している
・自分が克服したことや苦難を乗り越えた経験談などを話している
・ありのままの自分として、余計な力が抜けている
この腹の意識から生み出される言葉を「腹のポジション」の言葉と呼んでいます。
頭の意識・胸の意識と腹の意識の間には、一本の線があります。
線の上か下かが、「人を惹きつける」言葉とそうでない言葉の境界線なのです。
さてこの「腹」という日本語が、人を惹きつけるか惹きつけないかをひもとくキーワードです。
日本語では、表面的やうわべではなく一歩深い意思決定やコミュニケーションのニュアンスを表す際に「腹」というキーワードが多く使われてきました。
誰しも気づかないうちに、自然と意識が「腹」に向いているときがあります。
「腹を割って話しましょう」
「あなたのおっしゃることが腹落ちしました」
「絶対に達成すると腹を決める」
いかがでしょう? 他にもたくさんありますが、すべてに共通するのは、表面的ではなく一歩踏み込んだ「深さ」のニュアンスを感じられる言葉になっていることです。
なぜ、一歩深いニュアンスを示すときに「腹」というキーワードを使うのでしょうか。
それは、「腹」こそがすべてのエネルギーの起点という文化が日本にはあったからだと私は考えています。武道やスポーツや踊り、歌や呼吸器系を使う楽器の経験がある方はピンとくるのではないでしょうか? 「腹」の意識は力の起点として、パフォーマンスに影響する重要な要素です。先人たちが「腹」には何か特別なものがある⋯⋯と考えてきたからこそ、腹を使った慣用句がたくさんあるのでしょう。
これは、ビジネスシーンや日常会話でも同じです。「腹のポジションから生まれる言葉」が、結果に大きな影響を与える人を惹きつける言葉なのです。
ここまでお伝えした「頭のポジションの言葉」「胸のポジションの言葉」「腹のポジションの言葉」の意識で、まずは日常を観察してみてください。
コンビニの店員さんの「いらっしゃいませ」。
繁盛しているコーヒーチェーン店のお客さまへの挨拶「こんにちは」。
客室乗務員の声のかけ方「どうぞ、お声がけくださいませ」。
病院受付の「お大事に」。
結婚披露宴の司会者の「おめでとうございます」。
行政窓口の対応の言葉「お待たせしました」。
その他、結果を出している人のプレゼンや営業トーク。尊敬する人の言葉。授業やオンライン研修で講師が話す言葉。叩き上げの経営者の言葉⋯⋯。
唱えていないか?
うわべで説明的なのか?
それとも実感しているのか。
言葉に対する自分の視点を変えると、見える世界や聞こえる世界が変わります。
著者プロフィール
著:佐藤 政樹(さとう・まさき)
企業研修講師/講演家。1975年生まれ。就職活動で内定が一つも取れず、大学卒業後フリーターに。アルバイトで働きはじめた人材派遣業の営業職では、仕事ができないことが理由で“戦力外通告”を受け、自分の殻に閉じこもる。23歳の誕生日に「このままではまずい」と一念発起して、劇団四季への入団を決意。27歳で合格するまでの約5年の修行期間に、数々のアルバイト経験を通じて、「超」がつくほどの人見知りを克服。劇団四季では『ライオンキング』などへの出演を果たし、入団8年目に『人間になりたかった猫』で主役としてスポットライトを浴びる。その際に劇団四季創業者のカリスマ浅利慶太氏から「伝わる言葉」の本質をマンツーマンで直接学ぶ。その後、講演家になることを志して退団するもまったく食べていけず、ビジネス経験ゼロから飛び込み営業の会社に就職。営業では、はじめは鳴かず飛ばずだったが、浅利慶太氏から学んだ「伝わる言葉」と自ら編み出した「人を惹きつける話し方の技術」を活用することで、約500名近くいる社員の中で「多大なる貢献をした社員第2位」を獲得。自身の特異な経験をもとにした独自の講話は口コミで全国に拡がり、経営者やビジネスリーダー、営業マン、接客関係者まで、受講後に結果を出す人が続出。現在は、企業研修や講演活動で全国を飛び回り、延べ約300社・3万人を超える多くのビジネスパーソンに「人を惹きつける話し方」を伝授。伝える力やコミュニケーション能力、自己表現力の向上に貢献している。プレゼンイベントの殿堂TEDxにも出場し、「人を惹きつける話し方」を元にした『感動を創造する言葉の伝え方』のテーマで、日本人では異例の35万回再生を超えている。
『人を「惹きつける」話し方』
佐藤 政樹 プレジデント社 1760円(税込)
人見知りでも、口下手でも、「人を惹きつける話し方」はできる!「劇団四季」で主役を務め、飛び込み営業でトップクラスの成績を収め、「TEDx」で異例の35万回も再生され、延べ300社・3万人のビジネスパーソンに向けてメッセージを伝えてきた著者が伝える、「人を惹きつける話し方」の技術。話が伝わらない、聴いてもらえない、理解・納得してもらえない、自分の主張が通らないという方、必読の一冊!
構成/大槻由実子
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