「どの曲も同じに聞こえる」「曲が長すぎる」「曲名の数字や言葉が意味不明」。クラシック音楽やオーケストラに対して、こんな苦手意識を持つ人はいないでしょうか。大人になって興味が湧いてきたものの、一体どこから手をつけたらいいかわらかない。そんな「歴史の重み」もクラシック音楽を遠ざける原因かもしれません。

そんな人たちのために一肌脱いでくれたのが、クラシック音楽に精通する音楽プロデューサーの渋谷ゆう子さんです。著書『名曲の裏側 クラシック音楽家のヤバすぎる人生』では、まずは作曲家に焦点を当て、人となりを知ってみよう! というアプローチでクラシック音楽を紹介。しかも、その中には恋愛騒動や不倫沙汰などの話も。

煌びやかで崇高なクラシック音楽のイメージとはかけ離れた、時にドロドロ、時にほっこりの人間味溢れるエピソードが満載の本書から、今回は19世紀の女性たちを虜にした「リスト」。愛妻家にしてよきパパだったという「バッハ」。対照的な二人の愛の物語を、渋谷さんのおすすめの曲と共に一部抜粋してご紹介します!


失神する女性が続出!? クラシック音楽史上最もモテたリスト


まずご紹介したいのは、ピアニストで作曲家のフランツ・リストです。名曲「ラ・カンパネラ」や「愛の夢」などでもお馴染みですね。そんなリストは、「クラシック音楽史上最もモテた、スーパーイケメンピアニスト」だったそう!

フランツ・リスト(1811-1886年)

渋谷さんによると、リストの風貌、そして演奏風景は次のような感じだったといいます。

「細身で長身、肩まであるストレートヘアをさらっとかきあげて顎をそらせ、筋の通った鼻先から流した目線の先に鍵盤を見る。そしておもむろにピアノに手を置き、その長く美しい指を動かし始める。時に体をそらせ、時に天を仰ぎ見て、超絶技巧で繰り広げる煌びやかな彼の音楽は、そこにいる女性たちの瞳をうるませ、耳まで赤く染め上げた」

 

なんだか想像しただけで眩しい……! 中には、演奏に熱狂しすぎて失神してしまう女性もいたのだとか。さらに、リストがピアノの上に手袋でも忘れようものなら、女性たちがもみくちゃになって奪い合ったとの逸話もあるそうです。

リストのモテ男っぷりを想像するにふさわしい渋谷さんのおすすめ曲は、「『愛の夢』第3番イ長調」。演奏会後の楽屋口は、上の写真のような光景でしょうか。「私だってその場にいたら、リサイタル後に絶対出待ちしちゃう気がする」という渋谷さんのコメントに、ピアノの貴公子・リストの時空を超えたカリスマっぷりを感じずにはいられません。