演歌の詞でポップスを歌ったら面白い


──大江さんが歌う演歌をよく聞きますが、歌詞にポップスには使われない日本語がたくさん出てきますよね。演歌の歌詞の良さ、演歌ならではの良さって何だと思いますか。

大江:演歌の原点は、生活の歌なんですね。お仕事の歌なんです。山で働く人の歌であったり、海で働く漁師さんの歌であったり、そういう歌はやっぱりポップスではないんですよね。あと、あまり演歌の中に好きだ好きだっていう歌がなく、別れる歌が多いんです。

 

──失恋とか、別れた人への未練を歌った曲が多いですよね。

大江:『他人船』(三船和子)とかですね。他人船って他人の恋のことですから。幸せな演歌ってあんまりないです。やっぱり別れちゃう。男女の関係がもつれて逝っちゃうみたいなことばっかりですから。今のポップスとか聞くと、家族を愛するだとか、本当にそういう曲が多いです。演歌にはあまり恋人を愛してやまないとか、そういう歌ってないですよね。だから、演歌の詞でポップスを作って、ポップスの詞で演歌を作っちゃう。それが僕の夢なんです。「LINE」とか「メール」が演歌の歌詞の中に入ってきたら、結構面白いじゃないですか。あらっと思いますよね。

──「既読がつかない」とか。

大江:LINEの既読がつかない。いつになったら既読がつくんだろう。あの人は誰かとどこへやらと。

──結局、未練になってます(笑)。

大江:本当ですね、未練になってる(笑)。

──大江さんは演歌歌手ながらアルバム『TRY~大江裕J-POPを歌う~』では様々なポップスを歌ってらっしゃって、垣根がないですよね。

大江:もう、チャレンジできることはチャレンジしていこうかなと。今まではやっぱり、もう演歌しか歌いません、とか線を作ってしまっていたんですよね。でも今は演歌を聴いていると新人の方もちょっと歌謡曲寄りの演歌なんです。時代なのかなと思いますね。

──『TRY~大江裕J-POPを歌う~』では『ダンシング・オールナイト』(もんた&ブラザーズ)がすごく良かったです。大江さんの新境地という感じでした。今後歌ってみたいポップスはありますか。

大江:『ダンシング・オールナイト』を歌った次の日はもう声が出なかったですね。もんたよしのりさんは元々北島音楽事務所の方だったんです。その関係で1曲ポップス系の『ダンシング・オールナイト』を入れることになりました。大江裕っていうものは、自分では引き出しを見つけられないんです。やっぱり皆さんに引き出していただいて、自分の中にこういうのも入っていたんだ、と気づくんです。

ダンシング・オールナイト


大江さんの力強い歌声が絶妙にマッチし、一度聴くとクセになる。