約9割が「協議離婚」。養育費の支払い率は3割未満

 

そんな和人の言動を見て、離婚するためなら養育費をあきらめても……と匙を投げそうになるかなこに、新川先生はストップをかけました。「養育費とは、子どもの権利として、離婚後に離れて暮らす親から子どもが受け取るべきものであり、離れて暮らす親は扶養義務として子どもに支払う義務があります」と新川先生。ですが、養育費に関しては大きな問題もあるのだそう。

 

令和3年に厚生労働省が行なった調査では、離婚母子家庭のうち養育費の取り決めをしている世帯は約47%で、していない世帯の方が多いという結果に。日本の離婚は約9割が協議離婚なので、養育費の取り決めをせずに別れてしまうケースが少なくないのだそうです。新川先生曰く、養育費の支払い率は3割未満というのが現状……!

 

不誠実な対応に対処できる「債務名義」とは


そこで知っておきたいのが、「債務名義」というもの。この「債務名義」さえあれば、養育費の滞納があった場合にも、法の力で支払いを強制することができるといいます。

 

ひとり親家庭の深刻な問題としてたびたびニュースでも取り沙汰されるほど、取り決めをしても継続が難しいのが養育費の支払い。その解決策の一つ「債務名義による対処」は、「協議離婚口約束で決めた」「協議離婚約束書を作って決めた」場合は即座に取り立てはできませんが、次の4つであれば可能になるそうです。
 


▼「養育費」の取り決めについて……
1. 協議離婚強制執行認諾文言付公正証書を作って決めた
2. 調停離婚調停調書がある
3. 審判離婚審判調書がある
4. 判決離婚確定判決和解調書がある


養育費は子どもの権利、その権利を守るためにも債務名義は絶対に必要! と新川先生は力説。相手に不誠実な対応があったときに債務名義で対処するうえでも、新川先生は「協議離婚よりも調停離婚にしたほうがいい」とかなこにアドバイスを送ります。

 

もし、協議離婚にするなら約束事の公正証書を必ず作る。でもできれば調停離婚の方が安心。子どもの養育費が不払いになってから後悔しても遅い――。子どもの権利の大切さを繰り返し伝える新川先生のアドバイスを受けたかなこ、そして夫婦が出した結論とは……?


本書では、夫婦間の問題だけではない「子連れ離婚」について、離婚の種類や費用、養育費や面会交流、離婚届の諸手続き、さらには離婚後のライフプランについても詳しく解説。読めば読むほど、「子連れ離婚には準備と順番が大切」という新川さんの言葉の説得力が増してくる気がします。離婚をしても親は親、そして子どもの気持ちが一番大切、ということを軸に据えたこの本には、後悔をできるだけ最小限に留めるための、具体的な情報が詰まっています。

※法改正や制度の変更等により記載の内容に変更が生じる場合があります。
※個別の事情等により手続きが異なる場合があるのでご注意ください。

 

著者:新川てるえさん
作家・家庭問題カウンセラー・NPO法人M-STEP理事長。10代でアイドルグループのメンバーとして芸能界デビュー。1997年12月にインターネット上でシングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を開設。3度の結婚、離婚、再婚の経験を生かしシングルマザーコメンテーター・家族問題カウンセラーとして活躍。2014年シングルマザーとステップファミリーを支援するNPO法人M-STEPを設立。『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版社)、『子連れ再婚を考えたときに読む本』(太郎次郎社エディタス)など著書多数。TBS「ひるおび」などメディア出演多数。
【NPO法人M-STEP】https://m-step.org/

漫画:ふじいまさこさん
犬と田舎を愛するイラストレーター・漫画家。千葉県出身。女性誌や書籍を中心にコミカルなイラストで活動中。

法律監修:高橋麻理さん
弁護士。第二東京弁護士会所属。弁護士法人『Authense 法律事務所』にて勤務。

『マンガ 子連れ離婚を考えたときに読む本』
著者:新川てるえ 日東書院本社 1540円(税込)

重版を重ねて17刷のロングセラーとなった『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版社)を原作が、情報をアップデートした漫画版として登場! 3組に1組が離婚する時代。親権・養育費・面会交流・子どもへの伝え方など、子連れ離婚を考える人が必要な情報を凝縮し、わかりやすく&楽しく読める漫画で紹介します。子連れ離婚を考える人のための相談窓口一覧付き。



構成/金澤英恵

 
 
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