「業務指導はパワハラなの?」「職場で根も葉もない噂を流された」など職場での「グレー」な問題。迂闊な行動をして自分だけが損したり、トラブルに巻き込まれるのは避けたい、とどうにも動けず悶々と一人で悩んでいませんか? どの職場にもあるけれど誰かに聞きにくい75の疑問に答えた、社会保険労務士の村井真子さんの著書『職場問題グレーゾーンのトリセツ』より、5つの相談と村井さんの回答を抜粋してお届けします。


相談① 仕事上の注意をしたら、部下に「パワハラですよ」と言われました。

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村井さんのアドバイス:仕事に必要と認められる範囲の業務指示・指導はパワハラにはあたりません。

パワハラとは「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されること」を指します。したがって、これに該当しない仕事を進める上での指示や指導はパワハラにはあたりません。

仕事として指示や指導を行うのは、仕事を円滑に進めていくうえで当然のことです。成果物への認識が違っていれば修正が必要ですし、納期が決まっているものは厳格なタイムマネジメントも必須です。

 

また、ミスがあった場合に指摘したり、重大なエラーに関しては厳重に注意することも仕事の上で必要であれば当然に行うべきものです。むしろ、パワハラと言われることを恐れるあまり、まったくそうした指示・指導ができなくなるのであれば、指導者側の職務遂行能力を疑われてしまうでしょう。

問題になるのは、無自覚に行き過ぎた指示・指導をしてしまっている場合です。熱血指導が行き過ぎて根性論や精神論を持ち込んだり、仕事上のミスと人格を結び付けるような叱責はパワハラと受け取られる可能性が高まります。精神的な攻撃と受け取られるような威圧的な言葉選びや、感情が高ぶって机をたたく、こぶしを見せるなどの行動はパワハラ6類型(※1)のうち「精神的な攻撃」「身体的な攻撃」に該当するので、このような言動をしているときは直ちに改善が必要です。

また、ミスやクレームで損害があるなどの合理性のある場合を除いて、部下から仕事を取り上げる、チームでの仕事から外して情報を渡さないといった行動に出ると「過小な要求」「人間関係からの切り離し」と判断されることもあります。

自分の指示や指導がパワハラに当たるかと悩んだら、まずはパワハラ6類型に該当するかを確認しましょう。また、パワハラと言われないような注意の仕方、態度を示すのも大切です。注意をするときは、冷静に具体的な事実と改善点を伝え、感情的にならないように心がけましょう。

※1:厚生労働省が規定するパワハラ6類型は次の通りです。
①身体的侵害
②精神的侵害
③人間関係からの切り離し
④過大な要求
⑤過小な要求
⑥個の侵害