「女性を日常の役割から解放できる場所」と着火剤


手塚 一方で、男は金稼いでナンボという考えを持っていたり、女性が女性らしさを売り物にすることに嫌悪感を抱いている女性も少なくないですよね。だから、彼女たちへの偏見をなくすっていうのは、なかなか難儀だなとは思いますね、正直なところ。そういう意味では水商売に限らないでしょうけど。

――ホストという職業に対してはいかがですか。女性を搾取している、食い物にしているなど、一方的に「敵」としてみなされることもありますが、憤りを感じることはないでしょうか。

手塚 ホストクラブの社会的意義ってすごく難しいんです。良い面もあれば悪い面もあって。このビジネスが成立しているのは、ホストにお金をたくさん使ってくれる女性がいるから。つまり、「男を立たせることが正解」だと思っている女性たちがいるからであって、その点、敵視されることに反論したいかというと難しいというか、なんとも言えないですよね。

偏見や職業差別には慣れている、それでも...。強烈な逆風が吹いたコロナ禍の「夜の街」で、手塚マキさんが思ったこと_img0
 

とはいえ良い面としては、前にもインタビューで答えたんですが「女性を日常の役割から解放できる場所」だとも思っていて。そういう面が大きくなっていけたらとは思うけど、ホストクラブもビジネスなので、それだけというわけにはいかない。ただ、僕の中で腹落ちさせているのは、「男性が女性を跪かせる」ようなことが日常に溢れている中、そのバランスの悪さを是正するための着火剤くらいにはなれるんじゃないかということ。まあ、これは言い訳として自分を正当化しているともいえるんですけど。

――ホストのみなさんで歌会を開いたり、介護自業に参入されたり。手塚さんはこれまでのホスト像とか、ホストの在り方を変えようとされているようにも見えます。

手塚 僕は別に思想家でもないし、活動家でもありません。当然、僕がやっているホストクラブには、ビジネスが好きで集まっている仲間も多いわけです。だから、理想だけでは成り立たない。とはいえ、社会のあり方と並行して、僕の会社のあり方も変わっていければいいなとは思います。従業員全員と思いが一致するわけじゃないだろうけど、変化の一端を担ってくれるような人材が、1人か2人でも出てくれたらとは思いますけどね。