性の知識は「子供には理解できない」というのは、果たして真実か?


因田:さっき話に出た「プライベートパーツ」の話なんですが。本を作っているときに知ったことですが、「出産するまで、尿道とワギナの違いを知らなかった」という女性って意外と多いんです。

「セックスはよくない、穢れたもの」か?拒否感ではなく“安心”を育てるために不可欠な性教育3つのポイント<今考えたい「おうち性教育」第2回>_img0
イラスト:Shutterstock

坂口:それってよく考えたらすごいことですよね。だって「自分だけが大切に触ることができる一番大切な場所」なのに。

因田:ですよね。だって、その存在を知らない、見たこともない、病気になっても気づけない自分の身体の一部を、セックスする相手にゆだねてしまうって……そっちの方がむしろ恐ろしいんじゃないかって。

村瀬:セックスは「相手にプライバシーを明け渡す、命を預けるような行為」ですからね。

 

アツミ:全然違う話かもしれませんが、私もある程度大人になってから、何かの本で「トイレで大をした後に、後ろから前に拭くのは不衛生」と読んで、はっ! と思った経験があります。でもワギナの位置を知らなければ「なんで?」って話になりますよね。

坂口:でもワギナの正確な場所って……「性教育」以外に教わる機会、ありそうにないですね。

アツミ:生理は知ってるけど、どこから血が出てるかわからない…って、変な話、血尿とか痔とかと間違っちゃったりなんかは。

坂口:いや、さすがにそれは(笑)。……と思うけど、間違う人もいるかもしれないですね。

アツミ:性教育から派生する話って必ずしも「セックスそのもの」でなく、自分の命とか、健康とか、快不快の感情とかそれを自分でジャッジすることとか、他者との関係とか、なんだかすごくいろいろ関わっているってことなんですね。ちゃんと知るためには、大人世代も勉強しなきゃいけないですね。

因田:ホントですね。うちには男の子がいるんですけど、子供たちって普通に興味を持って「どこから生まれてきたの」って聞いてくるんです。その時にその知識がなかったら「そんなこと知らなくていいんだよ!」みたいな反応になっちゃうかもしれません。でも知らないことが子供のコンプレックスになってしまうこともあるし、それを抱えたまま大人になってしまえば、いろんなところで弊害がありそうですよね。

坂口:女性にとってのメイクと、ちょっと似てるかも。子供の頃は「化粧するな」って言われるけど、大人になった途端に「きちんと化粧しないと失礼」とか言われるじゃないですか。上手くできないことが自信を奪っていったりもする。でも全然教えてもらってないのに、きちんとできるわけなくない? っていう。

アツミ:そのうえ、セックスの知識は、メイクみたいに「自己流」で失敗しながら学べばいいというものでもないですしね。

因田:子供に関して言えば、知識として知ってるだけでホッとするんですよね。なんの偏見もない小さいうちなら、「女の人の足の間には3つの出口がこんな風に並んでいて……」と教えると、すんなりと「へえ、そうなんだ」ってなる。

坂口:うちも5歳の末っ子に産んだ時の話をしたとき「自分も協力して産まれてきたんだ」みたいに、性に対して肯定的な気持ちを持ってくれた気がしました。あの、もしかしたら、セックスそのものについてだって、早いうちから教えたほうがよくないですか。こうして話を伺っていたら、何がいけないのか、ますますよくわからなくなってきました。

村瀬:文科省は「子供は理解できない」と言っているんだけれど、本音は「知ることで興味を持ち不用意にセックスするんじゃないか」っていう子供への不信感があると思いますよ。

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アツミ:そういう理論展開って日本ではよく聞きますが、なんか的外れに思えるんです。「セックスについて教えたら、興味を持ってやり始めるから教えない」とか、経口避妊薬は「安易に中絶する人が出るから、買えないようにする」とか。知ることの弊害より、知らないことの弊害のほうが大きくないですか?

村瀬:根本的に間違ってると思いますよ。すべてをきちんと教え、知識を持てば、慎重な行動をとるようになります。性教育に積極的なオランダなどでは、15歳の性交渉の経験率は以前より低くなっているんですよ。