自分が我慢していることをしている人を見て怒りがわく


白川:愛着は「アタッチメント」と言います。特定の対象との情緒的な絆のことで、幼少期に安定したアタッチメントを築けたかどうかで心の傷の残りやすさも違ってきます。安定的なアタッチメントが育たない環境だと、頑張って着ぐるみを着るんです。

不安定なアタッチメントのひとつに「アンビヴァレントで両価的な(ひとつのものごとに対して、相反する感情や特性を同時に持ったりすること)アタッチメント」があります。このタイプの人は、何かあると助けてほしいということを過度に表現したり、逆に助けてもらえないといって攻撃するといった、対局の態度を取ったりします。もうひとつ「回避型アタッチメント」というのがあって、これはずっと拒否されてきたことが原因で、大切な人に距離をとるようになるタイプです。時としてトゲトゲとした振る舞いをしてしまいます。例えば泣いている人を見たら、自分は泣きたくても我慢しているのになんで泣くんだよというように、人の中に自分の抑えているところを見ると、怒りがわくということが起きます。ひどい虐待を受けてきた子は、全てが混沌とした「無秩序・無方向型アタッチメント」になります。

「親は子どもにとっての世界の代表」―DVの目撃・親が怒鳴ることでも重大なトラウマになる_img0
写真:Shutterstock

白川:トラウマを人の傷つきを引き起こすものだと定義すれば、PTSDになるような狭義のトラウマだけでなく、もっと種類があることがわかってきました。まず「関係性トラウマ」というのがあって、信頼できる関係性の不足や、暴力、虐待、離別などの経験によって、発達上の損失や精神的なトラウマを引き起こすことです。本当だったらこうあってほしいという関係性が破られることなので、例えば叩かれたり殴られたりしなくても、いじめや仲間はずれなどで、自分が人に近寄って行ったら、人が去っていったという体験なども傷つきになります。「人が離れていく」場面がフラッシュバックする人を、子どもにも大人にもみたことがあります。

次に「発達性トラウマ」というものもあります。児童期や周産期・胎児期、時に世代間を超えて生じるトラウマです。トラウマは何らかの世代を超えた影響があるんです。例えばお腹の中でお母さんが不安だったら、子どもの発達に影響が及ぶことがあります。そして最後に「アタッチメントトラウマ」です。これは「親との関係で生じる関係性トラウマ」でより重篤なものです。本当だったら親は愛着を保障してくれる存在です。自分のことが好きで、受け入れてくれるし拒絶しない、安心感を提供するとか、助けてと言ったら助けてくれる。それを提供する人が望むべき役割を果たさなかったことで引き起こされるトラウマのことです。

次回はトラウマによる影響についてお話を伺います。8月24日公開予定)

 


トラウマリカバリーカレッジあさがや第一回シンポジウム
「共同体のなかで傷ついてきた。なのになぜ、私たちは再び集うのか?」開催

2023年8月27日(日)13:00-17:00
オンライン開催(第2部後半を除いてアーカイブ配信あり 9/5-10/31)

■プログラム
第1部:援助者の視点から
「家族と国家は共謀する?」信田さよ子(原宿カウンセリングセンター顧問、日本公認心理師協会会長)
「回復過程における“場のチカラ”」大嶋栄子(特定非営利活動法人リカバリー代表)
「多重被害化(ポリヴィクティミゼーション)・共同体・トラウマインフォームドケア」 白川美也子 (トラウマリカバリーカレッジあさがや、 こころとからだ・光の花クリニック)

第2部:当事者の視点から
「トラウマリカバリーカレッジあさがやの試み」水谷みつる(トラウマリカバリーカレッジあさがや)
トラウマリカバリーカレッジあさがや「トラウマをめぐる対話と当事者研究の会」参加者
第3部:全体ディスカッション

■参加費
ライブ参加(アーカイブ付き):一般2500円、割引(経済的に厳しい方)2000円、応援付き3000円
アーカイブ視聴:一般2200円、割引(経済的に厳しい方)1700円、応援付き2700円

■申し込み&詳細:
ライブ参加(アーカイブ付き)
https://trc-1st-symposium-live.peatix.com
アーカイブ視聴
https://trc-1st-symposium-archive.peatix.com

※ライブ参加(アーカイブ付き)とアーカイブ視聴の違いについて
アーカイブ配信(9/5-10/31)には、第2部後半の「トラウマをめぐる対話と当事者研究の会」参加者の登壇部分が含まれません。
「トラウマをめぐる対話と当事者研究の会」参加者の登壇部分の詳細は、現在、準備のためのミーティングを開いて検討中ですが、サバイバー当事者が「トラウマサバイバーと共同体」というテーマに基づいて、それぞれの経験や考えを語ります。
当事者の生の声を聞く貴重な機会となります。お聞きになりたい方は、ライブ参加チケットをお選びください。もちろん、アーカイブ配信もご覧いただけます。

■キャンセルポリシー:主催者の都合によりシンポジウムが中止になった場合を除き、チケット購入後のキャンセルは承れません。

■ライブ参加、アーカイブ配信ともに、録音・録画・スクリーンショットを固くお断りいたします。

■主催:トラウマリカバリーカレッジあさがや

■協力:こころのケアとレジリエンス研究センター

■フライヤー制作/映像編集:八幡真弓(こころのケアとレジリエンス研究センター事務局、Praise the brave代表)

■お問い合わせ:trc.asagaya.info[at mark]gmail.com

※トラウマリカバリーカレッジあさがやとは
東京・阿佐ヶ谷に拠点を置く、トラウマに焦点を当てたリカバリーカレッジです。トラウマに関心をもつ多様な人々がともに学ぶ共同体の創出を目指して、2019年からオンラインおよびオフラインのプログラムを開催しています。

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取材・文/ヒオカ
撮影/日下部真紀
 

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