起業を目指して即行動
「夫はいわばゴルフの出張家庭教師。個人契約で、だからものすごく振り回されてしまいます。そこできちんとした練習場を作ってスクール、つまり法人にすることで、もうすこしシステムが確立して妙な事態を防げると考えました。そう思いついて一念発起、スクール設立を目指して行動を開始しました」
夫の問題行動を責めるのではなく、行動を変えるために作戦を練った明莉さん。非常に建設的です。もっとも智明さんはその意図を知る由もなく、「えー、スクールなんてそんな簡単にできないよ、日本の起業の仕組みとかよくわからないし」と乗り気ではかったそう。しかし明莉さんは、浮気云々を別にしても、いつまでも出張コーチでは肉体的にも精神的にも先細りだと感じ、計画を行動に移します。
「やると決めたものの、私は高校を出てすぐ事務職で働き、経営や起業、お金の勉強とは無縁でした。スクールを作るなんてどうやるのか見当もつきません。
まずはインスタやTikTokで『#起業』『#ゴルフスクール』などを手当たり次第に見て勉強。知り合いを辿っていろいろな方に話を聞き、起業するために必要なことを育児の合間に速習していきます。本を読むのはあまり得意じゃないので、YouTubeを倍速で見ました。……レベルが低くてすみません。でも、結局は小さくてもまずは行動するかどうかでしかないのかなと」
確かにその通り。小さな1歩でも、大きなことを成し遂げるためにはその1歩がないと始まりません。これまでの取材を通しても、そのことは強く感じてきました。仕事や家族関係は生活と密接に関係していて、だからこそ変化を起こすためには日々の行動を変えるのが近道ということかもしれません。
「ところがそんなある日、夫がオーストラリア時代からコツコツ2人で貯めた貯金700万円を引き出して使ってしまったことが発覚したんです。そしてそれどころか借金300万円まで。時を同じくして、第二子の妊娠が発覚。それ自体はとっても嬉しいけれど、先のことを考えるとこのときばかりは、ちーん、というマンガみたいな音が頭の中で響きました」
……どうやら智明さんは、ただの年下夫ではなく、「危なっかしいゆるふわ夫」であった模様です。
後編では、少々困ったところがあるパートナーと、人生のピンチを乗り越えようとするときのマインドセット、そしてイレギュラーで新しい「夫婦の在り方」を考察します。
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
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