生まれつき骨が育たないという500万人に1人の難病を持つ息子さんを育てる知里さん(32歳・仮名)。重度障害児の我が子の育児は医療介護に近く、命の綱渡りのような生活だったと言いますが、そんな中、なんと夫の浮気が判明。一度は許したそうですが、夫は浮気を辞めず、2年間も耐えた上で知里さんは離婚を決意しシングルマザーに。

自立するためには東京へ行くしかないと強い意志で上京し、新生活を始めた彼女でしたが、突然の体調不良に襲われ、身体がまったく動かなくなってしまいました。

 

第1回「妊娠中に赤ちゃんの重度障害が判明。「延命措置は親のエゴ...?」決断を迫られた母の選択」>>

第2回「重度障害児を必死に育てる中、夫が浮気...?妻が「私も悪かった」と冷静に語る理由」>>


取材者プロフィール知里さん(仮名)32歳
職業:会社経営 
家族構成:7歳の息子


      
 

メンタルの不調は「過労」が原因 


全国で唯一、東京にしかない重度障害児の保育園の枠が奇跡的に1人分空き、無事に真斗くんを入園させることができた知里さん。ようやく日中に自由に動ける時間ができ、経済的自立に向けて美容学校に通い始めました。

「手に職をつける」というのが当時の知里さんの目標で、気持ちは常に前向きだったそう。しかしながら、おそらくこれまでの心身の疲労が一気に押し寄せてしまったのか、ある日突然、身体が動かなくなってしまったのです。

「原因がわからずに病院を何軒も回った結果、最終的に精神科で『パニック障害・双極性障害』という診断を受けました。まさかと呆然とする私に、でもお医者さんが冷静に言ったんです。原因は明らかに過労。身体が疲れているからメンタルに影響が出てしまう。とにかく今は休むように、何もしないように、と」

もともと行動力があり好奇心旺盛で働き者、さらに真斗くんのことやシングルマザーとなった経緯もあり、おそらく知里さんは常に気が張っていて、何年も「休む」という感覚を忘れてしまっていたのかもしれません。お話を聞くほど彼女の強さには圧倒されてしまいますが、それでも、どんなに強い人でも「休む」ことはやはり必要なのだと思います。

ここまで綿密に計画を立てたにも関わらず、何もできなくなってしまったことに知里さんはショックを受けたそうですが、現実的にも身体が思うように動かず、寝たきりの生活をせざるを得ませんでした。

「息子を保育園への送迎だけ何とかこなしながら、あとはひたすら寝る、という生活をしばらくしていました。勉強して仕事をするのを目標にしていたのに……と途方に暮れる気持ちもありましたが、でも実際に休むことしかできなかったし、いくらでも寝ることができました。自覚はありませんでしたが、たぶん本当に疲れていたんだと思います」

身体の回復に時間を要した知里さんは、当然ながら美容学校に通うこともできず、辞めることになってしまいました。